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これまでのLINEの枠を超えたマーケティングの実現

 

LINE株式会社は5月18日、「LINE BIZ DAY 2022」と題したイベントを開催した。イベントでは、データ連携領域でのプロダクトの進化や、グループ会社とのシナジーを活かした今後の展望が語られた。

 

異なるサービスからユーザー体験を繋げていく

KEYNOTEの「Across the Borderline~これまでのLINEの枠を超えたマーケティングの実現~」では、LINE株式会社 上級執行役員 広告・法人事業統括 マーケティングソリューションカンパニーCEO 池端 由基氏が登壇。2021年の振り返りとして、「Brand」「Data」「CX」「Synergy」の4領域での取り組みを紹介した。Brand領域のTalk Head View Custom、LINE NEWS TOP AD、Data領域のビジネスマネージャー、CX領域のLINEミニアプリなどが大きな成果を上げている中で、Synergy領域ではソフトバンクとのプロジェクトに言及した。

 

これは、LINE広告による来店促進効果をソフトバンクのWi-Fiスポットで可視化した取り組みになる。事例として挙がった家電量販店では、Talk Head View Customを活用しながら、ターゲットユーザーに広告を配信。その広告がどの程度来店に寄与したかを測定した。クライアントが選定した49店舗の商圏内での結果として、広告接触者は、非接触者に比べて約76%の来店リフトを示した。併せて、来店者属性の約60%が10代から30代だったことについて池端氏は、「Talk Head View Customが来店に寄与していることに加え、チラシなどのプロモーションではアプローチが難しい層にリーチできていることはLINEならではの結果である」とした。

 

続けて2022年の注力領域として、ヤフー、PayPayの2社とのコラボレーションによる、販促領域での連携の実現を挙げた。池端氏は、「各サービスは異なるが、そこから生まれる顧客体験を1つに繋げていきたい」と強調した上で、これから目指していくべき世界を例に挙げた。

例えば、初めにユーザーはヤフーやLINEのサービスから広告に触れて商品を認知する。その後、店頭で商品を購入する段階でPayPayを使用すれば、その場でのキャンペーン応募が容易にできる。さらに支払いのタイミングで、店舗のLINE公式アカウントと友だちになることもできる。そしてLINE上でユーザーとお店が繋がり続けていく。

 

このようなイメージを共有しながら池端氏は、「LINEは人と人を繋ぐ、ヤフーは情報と人を繋ぐ。そして、PayPayは決済と人を繋ぐ。そのようなコンセプトで事業展開を進めてきた。この3社に加えてその他グループ各社との連携を進めていくことで、さらに様々なものと人が”繋がっている”、”繋がっていく”、”繋げていく”ようなサービスの実現を目指していきたい」と今後の展望を示した。

 

資料提供:LINE株式会社

 

 

ビジネスマネージャーによりオーディエンスの共有が可能に

続いてのセッション、「LINEの描くデータ活用の未来と、広告サービスの進化」では、同社 マーケティングソリューションカンパニー カンパニーエグゼクティブ プランニング統括本部 本部長 宮本 裕樹氏から、ビジネスマネージャーの詳細が述べられた。

昨今のデータ活用を取り巻く環境の変化により、各種データが分断していくトレンドの中、LINEではその分断されたデータを繋ぐ取り組みを行っている。そこで昨年10月から提供を開始したのがビジネスマネージャーである。

 

ビジネスマネージャーの特徴は、LINE公式アカウントやLINE広告、LINEで応募など複数の施策を横断してのデータ分析や活用が可能になる点である。また、ビジネスマネージャーが効果を最大限発揮する点の1つがオーディエンス活用である。LINEの中の行動データやクライアントが保有しているデータなどからユーザーをオーディエンス化していき、ビジネスマネージャーを経由して各プロダクトにそのオーディエンスを共有することで、ユーザーを絞っての配信が可能になる。リリースから半年でビジネスマネージャー導入企業も900を超えており(2022年4月時点 審査を通過して利用可能になった企業数の合計)、配信での活用も多数出てきている。

資料提供:LINE株式会社

 

 

サントリーホールディングス株式会社は実際にこの機能をうまく活用した事例になる。ビジネスマネージャーの登場前は、「ザ・プレミアム・モルツ」と「おとなサントリー」などを含む、異なるアカウントを運用する中で、サントリーが保有する友だちデータを広告配信に有効活用することはできていなかった。

 

そこでサントリーは、LINE公式アカウントの友だちを増やす狙いでLINE広告の出稿をするにあたり、ビジネスマネージャーを活用することとなる。これにより、広告出稿する際のシードデータとして既存の友だちデータ、つまりロイヤリティの高いユーザーデータを活用しての類似配信が可能となった。結果として、従来の一般的な興味関心セグメント配信と比較して、効率が改善した。宮本氏は、「LINE公式アカウントを所有しているクライアント様は、友だちのデータを資産として捉えて、LINE広告への活用も含めて検討いただきたい」とした。

 

 

協業により広がるマーケティングの幅

さらに、ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズグループ 事業開発室 室長 森岡康一氏、トレジャーデータ株式会社 代表取締役社長 三浦 喬氏を交えて、より詳細な3社の協業について語られた。

 

宮本氏によると、現在のデータソースはLINEや各クライアントのデータのみだが、将来的にはYahoo! JAPANのデータも追加していくという。さらに配信面にも同様にヤフーの面が広がっていくこととなる。配信先にYahoo!広告が指定できるようになると、日本最大級のデータ量に加えて、日本最大規模の配信面をコントロールできるプラットフォームが出来上がる。このビジョンに対し森岡氏は、「ビジネスマネージャーは我々としても非常に重要だと捉えている。これを用いてZホールディングスの基盤として成長させていくことが使命でもあるので、しっかり進化させていきたい。今後本格運用となると、迫力があり、幅が一気に広がったマーケティングが可能となる」と見解を示した。

 

また宮本氏は、トレジャーデータとの業務提携についても言及。今後はCDPやデータクリーンルーム領域をトレジャーデータと共同で開発するとともに、APIの連携により、顧客データとLINE上のデータのシームレスな連携を目指すとした。

宮本氏は、「この連携により、トレジャーデータ導入済みの企業で、LINEの様々なプロダクトを横断しての活用が可能になる。LINEは、フルファネルでコミュニケーションが取れるラインナップを揃えているが、実行するにはLINEだけでなくクライアントサイドでのデータ環境の整備も必要となってくる。LINEとしてもようやくそういった環境が整えられる段階に入ってきた」とした。

 

これに応じるように三浦氏も、「LINEは日本でおよそ9200万人以上(月間利用者数、2022年3月時点)が使っているコミュニケーションアプリであり、利用者分析からも全年齢層、かつ男女ともに利用するサービスであることがうかがえる。お客様のCDPに保管されている顧客データをフル活用して、LINE上でコミュニケーションを取るといったデータ連携は非常に大きな意義がある。また、サードパーティクッキーの問題もあり、顧客データを統合した上で、ファーストパーティデータをプライバシーに十分配慮した形で扱う態勢の構築も求められている。今後は、CDPでフルファネルのデータ統合をしながら、各サービスとAPI連携を行っていくようなソリューションをLINEと共に提供していきたい」とした。

 

資料提供:LINE株式会社

ABOUT 渡辺 龍

渡辺 龍

ExchangeWireJAPAN 編集担当 立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。 その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。