米グーグルは2024年後半にも、ウェブサイトをまたいで消費者の閲覧履歴をトラッキング(追跡)して共有するサードパーティークッキーを段階的に廃止すると発表している。ターゲティング(追跡型)ウェブ広告において、データの集め方に大きな変化が起きることになる。
インターネット利用者の過半数に及ぶ30億人規模の顧客プロファイルを管理する米トレジャーデータ共同創業者で現最高経営責任者(CEO)の太田一樹氏は、24年はデジタルマーケティング業界において節目の年になると展望する。データを取り巻くソフトウエア業界の見通しについて話を聞いた。
近年プライバシー保護の観点から、ウェブサイトをまたいで消費者の閲覧履歴をトラッキング(追跡)して共有する「サードパーティークッキー」が規制され始めている。17年から米アップルが自社ブラウザー「Safari(サファリ)」で段階的に制限を開始し、20年には初期設定で完全に制限。次いで24年1月からは米グーグルもブラウザー「Chrome(クローム)」で制限を始め、24年後半にも全面的に制限する方針だ。こうした動きに対し、各国の企業の対応状況はどうか。
トレジャーデータ太田一樹CEO(以下、太田氏):24年は、データマーケティングにとって節目の年になります。
サードパーティークッキーはこれまで、ウェブ広告ビジネスの源泉でした。誰が広告をクリックしたか、商品を買ったかといった情報を機械学習して似たような人に同じ広告を見せていたのに、この実現が難しくなります。広告のターゲティング精度が下がり、同じ予算でもひき付けられる消費者の数が大きく減ってしまいます。
代わりに、サイトを運営する企業自らが取得する顧客情報「ファーストパーティーデータ」を、グーグルなどの広告プラットフォームに渡すことでマーケティング効果が上がるという仕組みができあがりつつあります。
つまり、これまでは消費者が各社のウェブサイトにログインしなくても、誰が何を見ているか企業側はグーグルなどを使って把握できていた。しかしこれからは、サイトを運営する企業が自社データも組み合わせないといけない時代に移行します。米国企業はここ2~3年、このための準備を進めてきていますが、日本や韓国の企業はなかなか対応が遅いようです。
顧客情報が企業にとってより一層、資産になる。プライバシーの観点から規制が進んだ結果、むしろ企業は顧客からより多くのデータを取ろうとする現象が生まれています。
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