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 米Treasure Data(トレジャーデータ)が事業の世界展開を加速する。今後3~6カ月で進出先の国・地域を1.5倍に増やす。営業やマーケティングの体制強化や、主力製品であるデータ収集・分析クラウドサービスで支援する対象業務の拡充にも取り組む。一連の事業強化の「元手」はソフトバンクなどから調達した2億3400万ドル(発表当時のレートで約254億円)の資金だ。太田一樹最高経営責任者(CEO)は、社内外から大量のデータを集める「ビッグデータ」の時代は終わると断言する。ビッグデータの潮流に乗って成長した同社は、次に何を目指すのか。

 「次の3~6カ月で事業展開する国・地域を20カ国から30カ国へと増やす」。太田CEOは日経クロステックの取材にこう明かした。対象はマレーシア、シンガポール、インドネシア、タイ、フィリピンなどアジア太平洋地域を中心に据える。従業員についても今後3年で現在の500人を倍増するという。

「成長企業の経営層に会う機会は少ない。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの支援はありがたい」と語る太田CEO
「成長企業の経営層に会う機会は少ない。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの支援はありがたい」と語る太田CEO
(撮影:日経クロステック)
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 事業展開する国の拡大と並行して、同社がカスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)と呼ぶ主力製品も強化する。企業が持つ顧客データを収集・分析する基盤ソフトだ。太田CEOは主にマーケティング業務の支援用途として販売している同社CDP製品について、支援対象の業務を企業活動全般に広げる方針を示した。

 同方針に従い、2021年9月にコールセンター業務向けの「Treasure Data CDP for Service」の販売を始めた。電話やWebサイト、電子メール、メッセンジャーアプリなど様々なチャネル経由で集めた顧客データを、機械学習技術などを使って分析。解約率の予測や商品・サービスの推薦、LTV(ライフ・タイム・バリュー)と呼ぶ顧客ごとの収益価値の予測などを支援する。3年で100社への販売を目指す。「コールセンターはもはやコスト部門ではない。より上位の製品を提案したりまとめ買いを促したりと、データの力でLTV向上の要となる部門だ」(太田CEO)。

 同月には法人営業部門向けの「同 Sales」も発売した。今後はEC(電子商取引)部門向けやサプライチェーン連携など、対象業務を増やす。

 事業強化の原資となるのが、ソフトバンクなどから調達した資金だ。トレジャーデータは2021年11月4日、同社創業者が設立したファンドからと合わせて2億3400万ドル(当時のレートで約254億円)を調達したと発表した。