AIと顧客データの現在と未来
公開日 2026/02/02トレジャーデータのCEO、太田一樹によるウェビナー「The Present & Future of AI & Customer Data: Insights from Kaz Ohta, CEO of Treasure Data(英語)」の内容を、見逃してしまった方のためにまとめました。
課題:分断された顧客体験
あらゆる企業は、オンライン、実店舗、カスタマーサポートなど、多岐にわたるチャネルで顧客と接点を持っています。しかし、こうしたやり取りから得られるデータは、多くの場合、部門ごとにサイロ化しています。その結果、一貫性のない顧客体験が生み出され、収益や業務効率に悪影響を及ぼしているのです。トレジャーデータが描く、つながる顧客体験のビジョンは明快です。それは、顧客データを組織の「中心」に据えること。そうすることで、マーケティングだけでなく、セールス、サポート、コンプライアンス、さらにはサプライチェーン管理に至るまで、全社規模でより賢い意思決定を行えるようにすることです。

現在、トレジャーデータは、AB InBev、AXA、Nestlé、ホンダ、ソニーといった、世界400以上のグローバルブランドの顧客体験を支えています。驚くべきことに、インターネットに接続している世界の人口の約60%、すなわち約30億人ものデータが、私たちのシステム内で管理されているのです。市場には190社以上のCDPベンダーが存在しますが、ガートナー、フォレスター、IDCの3大調査会社すべてから「リーダー」として認められている独立系プロバイダーは、私たちただ一社です。できず、他の全員がその完了を待たなければならないという「依存のループ」が生まれます。その結果、価値を生み出すまでの時間が遅れ、変化に柔軟に対応できず、多大な運用コストがかさむことになります。
AIと顧客データの未来
AIは急速に産業を塗り替えています。生成AIはすでにITセキュリティやソフトウェアエンジニアリングといった分野で大きな飛躍を遂げましたが、営業、マーケティング、そしてカスタマーオペレーションの領域においてAIが真価を発揮するためには、企業独自の顧客データとの連携が不可欠です。一般的な知識を持つ基盤モデルとは異なり、AIを活用した顧客体験を実現するには、企業が保有する自社データとの深い統合が求められます。そして、それこそがまさにトレジャーデータの出番なのです。
顧客体験におけるAI活用の主要な課題
AIは莫大なチャンスをもたらす一方で、企業が解決しなければならない3つの大きな課題があります。
- パーソナライゼーションの欠如: AIエージェントは、顧客の過去のやり取りといった必要な文脈を欠いていることが多く、その結果、事務的で顧客を失望させるような体験を招いてしまいます。
- 短期記憶: 現在のAIシステムは、長期的な文脈を保持し続けることが苦手です。そのため、やり取りのたびに「はじめまして」の状態からやり直しているような感覚を顧客に与えてしまいます。
- 自動化と人間による監視のバランス:AIはコンテンツ制作などのタスクを劇的に加速させますが、品質管理や戦略の策定においては、依然として人間の判断が不可欠です。
トレジャーデータでは、AIは単なる「アシスタント」ではなく、共に働く「チームメイト」として機能すべきだと考えています。AIが、繰り返しの多いデータ集計や分析といった負荷の高いタスクを引き受け、人間はクリエイティビティ、戦略立案、そして顧客との関係構築に専念できる環境を目指しています。
AI時代のCDPにおける進化
過去10年間で、マーケティングテクノロジー(MarTech)の景観は爆発的に拡大し、数千ものSaaSソリューションが登場した結果、機能の過剰供給を招きました。現在、企業はこうした状況を整理・統合する方向へとシフトしており、部門間のサイロを打破し、ビジネスに真の影響をもたらす全社規模のソリューションを求めています。
これがなぜ、CDPにとって重要なのでしょうか?現在、多くのマーケティング・ベンダーが自社を「CDP」と称してリブランディングしていますが、真のエンタープライズ級CDPには以下の条件が不可欠です。
- 全社的なリアルタイムデータとバッチデータの統合
- 包括的で一元化された単一顧客プロファイルの構築
- 部門を横断したAI活用による意思決定の実現
AI + CDP:カスタマー・インテリジェンスの新時代
CDPはAIにとっての長期記憶としての役割を果たすことができます。これにより、企業は蓄積された過去の顧客データを活用して、AIが生み出すインサイトの質を高めることが可能になります。
例えば、AIを活用したマーケティングキャンペーンを想像してみてください。数年分にわたる顧客の行動データを瞬時に分析し、より高い精度でパーソナライズされた体験を即座に提供できるようになるのです。
私たちはすでに、「Treasure Retail」のようなAI駆動型のソリューションのプロトタイプ開発を進めています。これは実店舗のAIアシスタントが、商品の検索、在庫の確認、そしてパーソナライズされたレコメンデーションまでをサポートするものです。そのすべての判断は、CDPが持つリアルタイムのデータによって支えられています。
展望:チームメイトとしてのAI
2025年、AIはデータ分析、マーケティング・オペレーション、コピーライティングやクリエイティブ開発、そしてカスタマーサポートの自動化といった領域において、真の「チームメイト」へと進化すると予測しています。そこでCDPは、AIエージェントがインテリジェントな意思決定を下すために不可欠な文脈と、記憶を確実に提供するという、極めて重要な役割を担うことになります。エンタープライズAIにおける真の打開は、AI同士の連携ではなく、人間とAIのコラボレーションによってもたらされるのです。
私たちは、AIとCDPが織りなす未来に大きな期待を寄せています。そして、この領域のあり方を決定づけるようなイノベーションの創出に、現在進行形で取り組んでいます。

私たちはAIとCDPが切り拓く未来に胸を躍らせており、この分野を形作る革新的なソリューションの開発に積極的に取り組んでいます。
