消費財(CPG)ブランドが、コネクテッドデータを活用して意思決定する方法をマスターするには
「企業は常に予測不可能な事態に直面しています。そして、その多くは自分たちではコントロールできない類のものです。しかし、何が起きているのかを変えることはできなくても、それに対する自らの反応や意思決定は変えることができます。」
“Mastering Art of Decision-Making with Connected Data and Accessible Insights(コネクテッドデータとアクセス可能なインサイトから、意思決定の技術を習得する) “というウェビナーの冒頭で、消費財(CPG)業界のコンサルタントであるDavid McCarty氏はそう切り出しました。
McCarty氏のウェビナーには、AWSのワールドワイドCPG・リテールGTM担当であるJustin Honaman氏、Slalomのグローバルディレクター、Salesforceインダストリーリード担当のGreg Bistany氏、そしてトレジャーデータのコンシューマーインダストリー主席であるDanica Konetskiといった、CPG業界の識者・専門家が参加していました。本記事は、そのウェビナーからの内容を編集してお送りします。
データに基づいた意思決定はなぜ立ち行かないのか
Konetskiは、1,500人の意思決定者を対象とした最近のトレジャーデータの調査から、いくつかの興味深い統計データを紹介しました。回答者のうち57%は、より迅速に対応しなければならないというプレッシャーがあるにも関わらず、意思決定に時間を費やしているという結果でした。
意思決定に時間を要している反面、多くのリーダーは成果を実感できていません。Konetskiは、これはデータの不足ではなく、適切なタイミングで適切なインサイトを得ることができないことが原因だと述べています。
「データを集めてはいるが、それを適切なタイミングで、しかも意思決定者に指示を出せる形で提供できているのか、ということが問題なのです。これは、負のサイクルとも言えるでしょう」。Konetskiは重ねてこう指摘しました。「複合的な要素に起因しています。データが十分でなかった時と比べ、より多くのプロセス、より多くの人々、そしてより多くのデータがありますが、意思決定を促進したり、最適なサポートをしたりするものではありません。」
この課題は、リーダーたちが行うべき意思決定、必要なインサイト、そして正しい選択をサポートするために必要なデータについて、熟考する必要があることを示しています。
データを適切に活用し、より良い意思決定を
Honaman氏によると、データ分析は長年に渡り重要であり、CPGブランドにとって今後も枢要です。多くの大手ブランドは買収によって成長しており、バックエンド技術が連携されておらず、顧客や業務の全体像を把握することに課題を抱えています。
これらの課題を解決するソリューション、人工知能や機械学習への投資、新しい分析方法には、まさしくチャンスがあります。そこで役立つのが、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)です。
ROIの観点から、消費財メーカーが行うべき3点をまとめました。
- ファーストパーティ、セカンドパーティ、サードパーティのデータへの投資価値を見出す。広告費用対効果の改善、顧客獲得コストの低減、顧客生涯価値(CLV)の増加に焦点を当てる
- 自社データとそこから生み出されるインサイトを所有する
- 差別化されたカスタマーエクスペリエンスを創造する
「指標を考えるとき、収益の伸びなどを見ているかと思いますが、LTV(顧客生涯価値)を考察するのは、指標とは切り離せない関係性があるからです。顧客と直接つながるD2Cプラットフォームでは、平均注文金額や、さまざまな地域での市場浸透度を見ることができます。消費財ブランドの中には、さまざまな地域でD2Cモデルを採用し、本当に良い仕事をしているところもありますね。外してはいけない指標としては消費者体験におけるCSAT(Customer Satisfaction Score:顧客満足度)スコアもあります。これが、顧客データ基盤、CDPの導入に伴う、いくつかの指標です。」(Honaman氏)
Konetskiは、トレジャーデータの複数のクライアントにおけるROIの例として、獲得コストの88%削減(または3,500万ドルの削減)、3倍のコンバージョン率、クロスセルの機会の25%増加などを紹介しました。
データをつないで、新たなビジネスチャンスへ
時間をかけ、価値を追跡し測定することが重要で、かつ学びと成長とともに軌道修正する意志が求められています。コネクテッドデータを活用すれば、消費財ブランドは、そのフォーカスと市場参入する方法を拡大する、新たな機会を得ることができるでしょう。
コネクテッドデータでROIを最大化するために顧客と協働しているBistany氏は、「組織がデータを接続するための何らかの取り組みを始めていないのであれば、すでにその組織は競合に対して遅れを取っているといえるでしょう」と指摘しました。
「この時点では、追いつくことは目的ではなく、どうすれば競合他社に追いつくことができるかを考えることが必要です」とBistany氏は説明します。「そのひとつの方法が、フロントオフィスとバックオフィスを結びつけることです」。
また、Bistany氏は、ほとんどの課題は技術的なものではないと指摘します。経験不足であったり、戦略や優先事項のすり合わせが難しかったりすることが多いのです。Bistany氏は、こうした課題を克服するためには、経験、情熱、そして経営幹部の支援が必要だと述べています。
中小企業でもデータ分析に取り組むことができる
大企業は規模もデータも、特に多くのファーストパーティデータも保持しています。しかし、中小企業ではどうでしょうか? どうすれば投資対効果を得ることができるのでしょうか?
中堅・中小企業には通常、専任のデータアナリストやデータ統合の専門チームは存在しません。しかし、テクノロジーは進化を遂げ、クラウド機能によって、企業が自社サービス、あるいはツールとして、迅速にサービスを立ち上げられるようになっています。その結果、顧客データプラットフォーム(CDP)を構築するために、時間やリソースの面で大規模なIT投資をする必要はありません。
企業が支援を必要とするのは、データ統合の部分です。その点、世の中には支援できるパートナーの巨大なエコシステムがあります。
Konetskiは、トレジャーデータの顧客の20%以上は、CDPに登録されているプロファイルが100万件以下であると紹介しています。加えて、Treasure Data CDPには、すぐに使える機能やあらかじめ組み込まれた統合機能が数多く用意されています。
大企業は、技術的負債(簡単に置き換えられないないレガシーシステム)や、「これまで通り行う」 という慣例踏襲型のマインドセットに悩まされることが多いようです。中小企業にはそのような問題を抱えていないため、イノベーションに対してよりオープンという見方もあるでしょう。
データに関する課題を克服するために
消費財ブランドは最終的に、データを解放しインサイトを発見することで、顧客を理解し、より良い意思決定を行うことができるでしょう。ウェビナーのパネリストは、CPGブランドが直面するデータに関する課題について話し合い、「一度にすべてを行おうとすること」「データを完璧な状態にする必要があると思い込むこと」により、分析活動に対しての「麻痺」を引き起こすケースがあることを議論しました。こういった課題に対処するための主な方法として、以下の3点が挙げられました。
- データの活用方法を明確にする。それ抜きでは、技術を導入することだけに終始する場合がある
- 顧客データ基盤を構築するために実際に必要なデータソースを決定し、優先順位をつける
- 120日以内に結果を出せる活用領域を確定し、優先順位をつける
正しい活用方法を発見するためには、顧客の視点に立って、組織の外部から内部を見る必要があります。オーディエンスや顧客の実際の活用方法をまとめはじめると、顧客にとってどういったことが価値になるかを把握することができます。そこから、正しいインサイトを提供し、一貫して洗練された顧客体験=コネクテッドカスタマーエクスペリエンスを実現するための、顧客データ基盤の使い方を理解することができます。
本ウェビナーは無料で視聴できます(英語)。ぜひご視聴いただき、パネリストの貴重な洞察をお聞きください。データの取り扱いおよびROIの課題に直面しながらも、マーケターがより良い意思決定を行う方法について、詳しくは、当社の最近のレポート「Better Decisions:データ効率にスポットを当てたレポート」もダウンロードいただけます。
ケリー・デ・レオン
トレジャーデータのコンテンツマーケティング担当シニアディレクター。マーケター、ライター、スピーカーとして、顧客に適切で価値ある体験を提供し、ビジネスの成長を促進することに情熱を傾けている。