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AI時代にビジネスを飛躍させる 顧客データ活用戦略と組織論

公開日 2024/09/04

最新の顧客データ活用とAI技術を活用したビジネス戦略を共有する機会として、トレジャーデータ株式会社が5月24日(金)にヒルトン小田原リゾート&スパで開催したエグゼクティブセミナー「Treasure Data Executive Meetup」。

当日もっとも注目を集めたプログラムは、
澤 円氏(株式会社圓窓代表取締役)と石附 洋徳氏 (ボストン コンサルティング グループ)によるスペシャルセッションでした。司会はトレジャーデータ株式会社のHead of Marketing, Japan& APAC の生江 瑠奈が務めました。

澤 円

株式会社圓窓
代表取締役

元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。現在は株式会社圓窓 代表取締役。DXやビジネスパーソンの生産性向上、サイバーセキュリティや組織マネジメントなど幅広い領域のアドバイザーやコンサルティングなどを行っている。

石附 洋徳

ボストン コンサルティング グループ(BCG)
パートナー&アソシエイト・ディレクター

株式会社博報堂、カシオ計算機株式会社でCDO 兼 CIOを務めた後、2023年にBCGに入社。マーケティング領域でのデータやデジタル技術を活用した事業変革や、新規サービス開発などを得意とする。

生江 瑶奈

トレジャーデータ株式会社
Head of Marketing Japan & APAC

日本マイクロソフト株式会社にて社長室、経営企画を経て、CRM、デジタルなど中心にBtoC と BtoB 両領域のマーケティングに従事。その後SAPジャパン株式会社を経て2023年5月にトレジャーデータに参画。

顧客データとAI のトレンドとは

石附氏

昔はとにかくデータを集めれば、そこに解があると思われていました。でも今は、顧客データというものがあまりに膨大になっていて、全部を理解しようとしても無理ですよね。そうなるとデータとの接し方は、二つに分かれると思います。一つは、見るデータを絞り込む。もう一つはAIにスコアリングさせて優先順位付けをさせたり、トリガー機能として使ったり。

澤氏

いくつか説がありますが、SNSの普及もあって企業が扱う顧客データの量は、ここ10年で確実に10倍以上に膨らんでいます。だから、データを集めればどうにかなるというのは、本当に諦めた方がいい。データを集めただけでは人によって解釈は違ってくるし、それぞれがそれぞれの解釈で活動をしてしまうかもれない。

石附氏

重要になるのは、経営層がデータをどう解釈し何をするのかということ。そして、みんながその解釈を信じてついて来てくれるようなプロセスや体制、ひいては組織を作ることだと思います。

澤氏

データには鮮度もあります。アクションに移すまでのリードタイムを短くする必要がある。さらにそのスピード感は、年々加速していくでしょう。そうなると、中長期経営計画を作って、その通りに3年やりましょうというのは無理がでてくる。だから大切なことは、いつでもピボットできる状態にしておくことですね。

生江

AIの能力は、投入するデータの質で決まるんですよね。いろいろな種類のデータがあって、集めようと思えばいくらでも集められるけど、質が大事です。質の高いデータを使うことで、AIがちゃんと動いて、未来に大きな影響を与えます。だから、データをどう捉えるか、何を使うか、それをビジョンと結びつけることが大切です。

AI はどのように顧客データに絡んでいくのか

澤氏

日本で仕事をするときに、「怒られる」というキーワードをよく聞きます。怒られないようにすることがビジネスにおけるトッププライオリティなっているのかと思うくらい。怒る人の言う事がいつも正しく絶対に儲かるのであればいいけど、そんなことはない。だけど人って怒られることは嫌ですよね。そこでAIなんです。人でやったら怒られることをAIで徹底的にやる。AIであれば1秒間に100個のプロンプトを投げたっていいわけですよ。人でやったら何ヶ月もかかっていたことが数時間で行えるわけです。しかも怒られることなく。

石附氏

AIは人が分析しきれないところを膨大なデータから推測してくれる。それは経営やマーケティングの判断軸になります。まさに、AIを活用するポイントだと思います。

IT人材不足への課題解決方法

生江

今回のイベントでは、参加者の方にリアルタイムでアンケートを答えていただきました。

顧客データ活用において、どのような課題があるかという問いに対しては、「データ活用人材の不足」がもっとも多いですね。

澤氏

日本におけるIT人材の割合は、事業会社に25%、ベンダー会社に75%という構造 になっています。この産業構造が何を引き起こしたかというと、ずっとオーダーメイドのシステムを作ることが続いたことにより、汎用品(SaaSなど)を使わせないカルチャーを生みました。しかし最近はそのカルチャーも変わってきました。

それこそトレジャーデータは汎用品なわけです。IT人材不足への課題解決の方法としては、数人でかまわないので社内で汎用品を徹底的に使い倒してもらい、自社固有のデータをそこで加工したり分析したりできる状態を作ることが大切だと思います。

石附氏

データ人材はやはり内部で育てていかない限り難しいと思います。でも「うちにはデータサイエンティストいないので……」のような話になってしまう。今はテクノロジーもソリューションも進化しているから、専門知識がなくてもデータサイエンティストの一歩手前のことなら、実はやる気と努力でできると思っていて。とくに若手は、データの分野に入りやすいと思います。扱いやすいプラットフォームの中で、データ人材を育てていくことが一番の近道だと感じています。

AI を活用すべき領域とは?

石附氏

アンケートの結果を見ての感想になりますが、世の中的にまずは業務オペレーションを効率化させようとする企業がとても多いなか、その先にあるパーソナライズされたマーケティングをしたいと思われている方が想像以上に多く、とてもいいことだと思いました。

もちろん業務オペレーションの効率化は、お客様に対して素晴らしいサービスを提供する余力をもたらすと思います。

しかし最終的には、お客様の体験価値を向上させ、満足していただくところまで見据えて AI を活用する企業が増えることが重要だと感じます。

澤氏

すべてパーソナライズ化されていくと思います。家電業界はとくに顕著ですよね。
AIを搭載して、その人の行動パターンや趣味趣向に合わせてサービスを提供していくことが求められてくると思います。

これからに向けて考えるべきこととは?

澤氏

嫌な仕事は AI にやってもらう。人ってストレスを感じるとパフォーマンスが下がるんですね。最近は人的資本経営というキーワードもあります。快適な状態で仕事ができる時間を最大化してもらう。

嫌なことはとにかく減らして、自分が面白いと思うことの時間をできる限り作る。あくまでも効率的に、本当に顧客のためになることやりましょうというだけの話なので。

石附氏

AIに任せられる仕事はどんどん任せていって、自分たちの業務を減らしていくことが重要だと思います。あるグローバル企業の事例なのですが、マーケティングチームにAIを導入したそうなんですね。
そうしたら今まで6ヶ月かかっていたマーケティングプロセスが6週間くらいになったと。どれくらい効果が出たかというと10億ドルだと言うんです。

澤氏

もうひとつは、ビジョンドリブンでなきゃいけないと思っています。我々はこういう世界を作りたいというビジョンやパーパスを起点にすることがすごく重要。
ビジョンやパーパスがあって、初めてデータをどう活用して理想に近づけるか、そういう考え方になってくと思うんです。データを使ってやりたいことを実現していただきたい。

石附氏

じゃあデータは重要じゃないの?と思われるかもしれないけど、そうではないと思っています。ビジョンドリブンである人ほど、実はデータをきちんと見よう、分析しようとする人たちが多いです。データからインスピレーションを得て、やっぱりこれをやるしかないという想いがより強くなる。それが真のデータドリブンな組織であり、経営じゃないかなと私は思っています。

データを扱うトレンドは、収束したという見方をされることもありますが、私は逆に、今ようやく本当の意味でデータを活用できる状況ができたと思っています。

生江

お二人のご意見にとても共感いたしました。ビジョンドリブンで、顧客データに基づいたパーソナライズされたアプローチが、顧客を軸としたビジネスにとって非常に重要ですね。顧客データの価値は今後一段と高まると考えていますので、今後も皆様のビジネスに貢献していきたいと思います。

今回の講義のまとめ

1 顧客データとAIのトレンド
データの取捨選択と質が重要であり、AIのスコアリングやトリガー機能を活用すべきである。 経営層がデータをどう解釈し、迅速に行動するかが鍵となる。
2 AIによる業務効率化とパーソナライズ化の推進
AIは業務の効率化とパーソナライズ化を推進し、迅速かつ効果的な顧客体験向上を実現する。 AIの活用により、従来の業務が大幅に短縮される。
3 IT人材不足の解決策とAIの役割
IT人材不足の解決には内部育成と汎用品(SaaSなど)の活用が必要である。 ビジョンドリブンのアプローチを取り、ビジョンやパーパスを起点にデータを 効果的に活用することが求められる。
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