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500万人の顧客データ活用を少人数で運用! 利用動機をつくるOpenStreetの顧客体験設計とは

事例顧客
  • OpenStreet株式会社
    COO室 データサイエンスチーム チームリーダー
  • 山田 慧史氏

近年、急速に市場を拡大しているシェアモビリティ。各社が競ってエリアと会員を拡大するなか、「HELLO CYCLING」「HELLO MOBILITY」を運営するOpenStreet株式会社(以下OpenStreet)は、日本最大級の規模を誇る。
ビジネスの成長を左右する大きなファクターのひとつが顧客体験だ。サービスの使いやすさはもちろん、非使用時のコミュニケーションを含むトータルの体験設計が、ユーザーを維持し、利用頻度を上げるカギとなる。
OpenStreetデータサイエンスチーム チームリーダーの山田慧史氏は、Treasure Data CDPを運用し、顧客コミュニケーションに活用してきた。少数精鋭でダイナミックなデータ活用を目指す企業・組織の方に、ぜひ参考にしていただきたい事例だ。

効率的なデータ活用
500万人に及ぶ大規模顧客データを、少人数チームで効率的に運用
利用動機に合わせた顧客体験設計
アプリ利用データから行動傾向を分析して動機を喚起
タイミングを重視した施策実施
潜在的な利用ニーズが高まるタイミングに合わせたコミュニケーション

急成長のサービスを支える少数精鋭のデータ活用

OpenStreetは2016年、ソフトバンクの事業コンテスト「ソフトバンクイノベンチャー」から誕生した。創業以来運営する「HELLO CYCLING」は、複数のステーションで自転車を借り、どこでも返却可能というシェアサイクルサービス。2022年には、同じく小型電気自動車や電動スクーターが利用できる「HELLO MOBILITY」を開始した。

シェアモビリティのビジネスは、車両の再配置やバッテリーの充電など、運営のランニングコストが大きい。同社は、全プロセスをひとつの企業グループで行う(垂直統合)ではなく、自社はシステム開発や会員獲得に専念し、実際の運用は各地域の提携事業者が行う水平分業を採用している。
また、ネットワーク外部性(利用者が増えるほど、サービスの利便性が向上する)が大きいビジネスでもある。いち早くエリアを拡大し、ユーザーを獲得することが、極めて重要だ。いずれの点でも、限られたリソースでスピーディに規模を拡大できる水平分業は、競争力の高い戦略と言える。

実際、「HELLO CYCLING」は後発ながら急成長を果たし、2025年10月現在、ステーション数は全国に1万1万2,000以上。会員数は「直近は毎年100万人ずつ増加するペース」(山田氏)という勢いで、500万人に届こうとしている。

HELLOCYCLING_ご利用方法

ただ、こうしたビジネスモデルゆえに、本部機能は全体の規模に対して、非常にコンパクト。CDPを効率よく運用すれば、少人数でも大量の顧客データを扱い、インパクトのある施策が可能であることを、よく示す事例と言える。
以下、主に「ハローサイクリング」のCDP活用事例を見ていこう。

利用動機をつくる顧客コミュニケーション

「HELLO CYCLING」のユーザーは、専用アプリを通して自転車のレンタル予約、決済、返却を行う。通勤通学から買い物等の日常使い、観光でのサイクリング、イベント時の利用(最寄り駅からスタジアムへの移動他)と、用途は多岐にわたる。
同社は、アプリから取得したデータをTreasure Data CDPに格納し、カスタマージャーニーオーケストレーションを運用する。利用時間や利用ステーションなどのデータから、ユーザーの行動の傾向を類推してセグメントとシナリオを作成、CRMツールを介してユーザー向けのメールを配信している。

「自転車はほとんどの人が利用可能な移動手段なので、デモグラフィックによるセグメントよりも、ユーザーの利用動機をつくることが大切」と山田氏は、運用のポイントを説明する。会員登録時のハードルを下げる意味もあり、取得する個人情報は、名前、メールアドレス、電話番号、決済方法と最小限だ。

山田氏によれば、アプリダウンロードから数日以内に利用するのは40%程度だという。会員登録後の利用促進は、同社の大きな課題だ。
生活圏にステーションを増やす、アプリやデバイスの使い勝手を向上する、といった施策が重要だが、それ以外に顧客コミュニケーションで解決可能な部分も大きい。

例えば、特定のステーションを定期的に利用するユーザーは、買い物など日常の足に使っていることが推定できる。近隣に新ステーションが設置された場合、そのことを通知することで、より近くのステーションからレンタルしたり、別の目的地へ出かける機会にも利用するなど、利用動機を提示でき、利用の可能性を広げることに繋がる。
現状は手動による作業も残るが、「こうしたコミュニケーションを自動化できれば、さらにきめ細かく、効率よく、ユーザーにメリットのある提案ができる」(山田氏)と、CDP運用の高度化を進めている。

より広範に行っている施策が、季節やイベントに応じたキャンペーンやコンテンツの配信だ。例えば2025年3月には、SNSと連動した「ハローサイクリング×桜」フォトコンテストを、メールやアプリで告知した。ハローサイクリングの自転車と桜を一緒に撮った写真に、「#ハロー活」を付けてX、Instagramへ投稿すると、優秀作品には2000円分、参加賞だけでも160円分のクーポンが進呈される。
シェアサイクルの利用率は、気温や天候に左右される。冬場の利用者は減少するが、春になって暖かくなれば、通勤通学にバスではなく自転車を利用したり、休日にサイクリングで風を切る気分にもなる。「ハローサイクリング×桜」は、ユーザーが潜在的に持つ利用動機をキャンペーンで喚起しているのだ。

とはいえ、500万人の全会員を対象にすれば、CRMツールのメール配信コストもかさむ。同社は直近のデータから、利用可能性の高いユーザーをターゲティングすることで、効率の良いコミュニケーションを行っている。

また、山田氏は他部門のマーケターとの連携にも積極的だ。「(CDPの運用に必要な)SQLのスキルを持たない人材でも分析できるよう、切り口を工夫してデータを共有している」。

山田氏

条件にあうユーザーのなかでも、直近の利用傾向と突き合わせ、離脱する可能性が高い人、クーポンにより利用が増える人をターゲティングした。「クーポンがなくても利用する人や、まったく利用する可能性のない人に送ると、余計なマーケティングコストがかかる。施策の費用対効果が上がるように、データを活用しなければならない」と山田氏は強調する。

このように、事業環境に応じてデータと施策を絞り、効率的に顧客コミュニケーションをとっていくのが、同社のCDP運用だ。試行錯誤を繰り返してきた山田氏が語る効率運用のポイントは「安定的なシステムの稼働」。「エラーやトラブルが起こらないよう、すごく気を使っている」という。

一度データ処理にトラブルが起こると、原因の究明から、復旧、再発防止に多くの時間をとられ、その間に本来行うべき生産的な作業ができなくなる。少人数で運用するうえで、最も回避するべきリスクだ。
だからこそ、安定運用が最優先事項。そのためには、「データが増えたときのことも予測して、プログラムを書く必要がある」と山田氏。これまでの様々な経験から、蓄積したノウハウである。

顧客体験向上のカギは施策のタイミング

シェアサイクルのビジネスにおいて、規模の拡大が重要であることは、先に述べたとおり。だが、他社も同様にサービスを充実させており、これからは同じエリアのなかで競合するケースも増えてくる。そのときライバルのなかから「HELLO CYCLING」を選んでもらうためには、非使用時の顧客体験(日常のコミュニケーション)を充実させる必要がある。

現状の運用で、課題に挙がるのはコンテンツだ。少人数での運用体制では多くのコンテンツを作成できず、施策の総数や、パーソナライズされたコミュニケーションが限定される。
現在は、より多くの会員に読んでもらえる厳選されたコンテンツを探求し、効率的なコンテンツ制作・利用機会創出のための配信を目指し、運用の最適化を心掛けている。

同時に、山田氏はコミュニケーションのタイミングを、極めて重視する。「ユーザーが求める情報を、ほしいときに届けたい」(山田氏)。例えば、ファッション通販の新着情報などは、仕事で忙しい平日より、時間的に余裕のある休日に読んだほうが、購買意欲が刺激されるだろう。
シェアモビリティも同様で、レジャーや観光で土日祝日に使うユーザーには、直前の金曜日にメッセージを送るほうが、利用促進の効果が高いと推測できる。あるいは、通勤通学のため平日に使うユーザーに対しては、週初めの月曜日にメールを送信する、といった運用が合理的だろう。

さらに将来の展望として、山田氏は「もっとリアルタイムのコミュニケーションを実現したい」とビジョンを明かす。例えば、ユーザーがよく使う時間帯に自転車の空き状況をプッシュ通知したり、返却されて予約枠が空くと即座に知らせてくれるような仕組みの構築だ。

シェアモビリティは、同種のサービスはもちろん、バスやタクシー、電車、自家用車、場合によっては徒歩など、潜在的な競合が多岐にわたる。しかも、一方が他方を完全に置き換えるような関係ではなく、用途や天候、ユーザーのマインドなどにより、流動的に移動手段が選択される。
だからこそ、いつ、どんなメッセージを送るかが、ユーザーの体験を大きく左右する。タイミングを重視する山田氏のアプローチは非常に興味深く、多くのビジネスの示唆に富んでいる。データ活用のひとつの視点として、参考にしていただきたい。

上記以外にも少数精鋭でデータドリブンな経営を行っているOpenStreet。豊富なデータ活用・分析の事例をこちらで公開している。

https://note.com/openstreet/m/m78f61c9fa00a

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