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データ統合×モバイル活用で営業を「情報武装化」する

事例顧客
  • 伊橋 仁氏
    富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社
    営業計画部 営業企画室 / 情報1グループ グループ長
  • 山影 健一郎氏
    富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社
    営業計画部 営業企画室 / 情報1グループ
  • 塚越 史夏氏
    富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社
    営業計画部 営業企画室 / 情報1グループ

組織全体での人脈情報の活用、お客様プロファイルを活用したタッチポイント強化に向けて、Treasure Data CDPを導入した富士フイルムビジネスイノベーションジャパン。CDPと連携する業務支援システムを独自開発し、導入当初から営業の効率化に成果を挙げている。

ポイントは、社内に散在するデータを統合したうえで、手軽にアクセスできる環境をモバイル端末に展開したことだ。一人ひとりが多様な商材を扱い、多数の顧客を担当するという、ソリューション営業の実情に合わせたデータか活用を実現した。

「情報武装化」(同社)により、豊富な人的リソースを強化するアプローチは、BtoB営業のDXを考えるうえで、貴重な示唆に富んでいる。プロジェクトを主導する営業計画部 営業企画室 情報1グループの伊橋仁氏、山影健一郎氏、塚越史夏氏に、CDP運用と独自システムのポイントを詳しく聞いた。

+3.2%
CDPを活用した独自システムで営業の顧客カバレッジを改善
80人月(2カ月)
独自システムにより営業の間接工数を大幅に削減
モバイルに最適化
CDPに統合されたデータへ、営業のモバイル端末からアクセスできる仕組みづくり

複雑で多様な商材を扱うソリューション営業を支援する

富士フイルムビジネスイノベーションジャパンは、2021年に社名変更した旧・富士ゼロックスの国内営業機能を担う新会社として設立されました。2019年に富士フイルムホールディングスが全株式を取得し、2021年に富士フイルムビジネスイノベーションへと社名を変更した。
「会社の成り立ちから、オフィス複合機の会社と思われがちだが、歩みの中でビジネスドメインを移行してきた」と伊橋氏。現在は「『ビジネス』に、革新を。」をミッションに、機器の販売だけでなく、ITに関するソリューションの提供、コンサルティングを担っている。
およそ3兆円にのぼる富士フイルムグループの売上のなかでも、ビジネスイノベーションはその40%近く、グローバルで1兆円以上の規模を持つ事業。国内事業を担う富士フイルムビジネスイノベーションジャパンは、その40%程度を占め、社員数は約10,000人。

企業のDX推進に必要なITソリューションを、「検討・導入から運用・保守までワンストップで提供する」(伊橋氏)のが、同社のビジネスモデルだ。部門ごとの業務システムや全社的な業務プラットフォームの導入、オフィス複合機はじめハードウェアやIaaSなどITインフラの構築まで、幅広い領域をカバーする。

多岐にわたるサービスを扱いながら、商機を的確に捉え、顧客ニーズに応えるソリューション営業こそ、同社の価値創出の源泉だ。1万人の社員のうち、約8割近くがお客様接点の部門に所属する。伊橋氏ら営業企画室は、彼らの業務をデジタルによって改革し、増力化を支援する仕組みづくりを推進する。

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変化する顧客行動に営業を最適化する

伊橋氏は、昨今の営業スタイルのトレンドに着目する。多くの企業は、モノを売るだけのプロダクト営業から、顧客の課題解決を提供価値とするソリューション営業へとシフト。さらに顧客自身も気づいていない潜在的なニーズを掘り起こす、インサイト営業の重要性も指摘される。
そのうえで、同氏が重視するのは、認知、検討、購買といった顧客行動に関する変化だ。顧客は広告で商材を認知すると、検討のため問い合わせや資料請求を行う。シグナルを受け取った営業は顧客にコンタクトをとり、情報提供や提案といった営業プロセスをスタート。契約後は、問い合わせ対応やアフターサポートへ進む。

大きな流れは変わらないが、公式サイトのほか、第三者による比較やレビュー、オンラインセミナーなど、インターネット上で顧客自身が取得できる情報は大幅に増加した。顧客は営業に頼らず、自身で能動的に情報収集するようになり、検討のフェーズが延びたと、伊橋氏は指摘する。結果的に、営業が訪問するときには、ほぼ購買の意思決定がなされており「重要な商材選定のプロセスに後れを取る懸念がある」(伊橋氏)。

さらに伊橋氏は、「継続してご利用いただくことで、収益が上がる」と契約後の変化にも言及する。現在のビジネス環境では機器を販売して終了ではなく、むしろその後のサブスクリプションやアップセル、クロスセルに売上拡大のチャンスがある。
そのようななかでは、顧客の資料請求や、契約後の問い合わせに対応するプル型のコミュニケーションだけでは不十分。検討フェーズからのアプローチ、商材の提供価値を高めるプッシュ型のサポートが重要になる。同社に限らず、あらゆるBtoB営業に共通する課題だろう。

とはいえ、実際の変化への対応は一筋縄では進まない。富士フイルムビジネスイノベーションジャパンでも各フェーズの対策は実施してきたが、「会社を変えていくほどの行動の変化にはまだ初期段階と伊橋氏は率直に振り返る。デジタルマーケティングは積極的に進めていたものの、まだまだ改善余地があり、そんな問題意識から、CDP導入プロジェクトが発足した。

CDPの顧客ステータスデータをモバイル端末に連携し、アカウント営業の情報武装化を加速

富士フイルムビジネスイノベーションジャパンがCDP導入で目指すのは「One to One アプローチ」。Treasure Data CDPが提供するもっとも重要な価値のひとつであり、多くのユーザー企業がビジネスの成果につなげてきたベネフィットだろう。同社が興味深いのは、CDPをベースとして、さらに独自の仕組みづくりを推進していることだ。

一般的なCRMでは、資料ダウンロードやセミナー参加の機会に取得した顧客のメールアドレスに対し、有益な情報を配信して関係を構築しようとする。単なるメールマガジンの一斉配信では、顧客のノイズになることもあるが、Treasure Data CDPで多様なタッチポイントの情報を統合すれば、顧客理解を深め、個々のカスタマージャーニーに応じて、最適なタイミングで最適なメッセージを届けられる。CDPで顧客中心のコミュニケーションを構築する際の基本線だ。

一方、伊橋氏は「セオリーは理解しつつも、自分たちに同じやり方は合わないと気付いた」と、設計時を振り返る。

認識していた課題は、大きく3つ。1つ目は、ECサイト、メール配信ツール、営業が管理するSFAと、顧客情報が分散的に管理されていたことだ。「データが散在しており、部門や顧客接点を横断する活用ができていなかった」(伊橋氏)。2つ目は、メール配信ツールの運用。デジマツールの導入は進んでいたものの、ほぼ一斉配信しか行われておらず、リードの育成から案件獲得といったプロセス設計)への対応は困難だったという。

注目したいのは、3つ目の課題として伊橋氏が挙げた、営業が持つモバイル端末の活用だ。同社の営業活動は、一人が数多くの顧客を担当し、ときには直接的な商談以外のコミュニケーションで関係を構築する、きめ細かいアカウント営業が特徴。そのため、全員にスマートフォンやモバイル端末が支給されているが、営業担当者は電話とメール、ブラウザのチェックといった基本的な機能の活用にとどまっていた。
モバイルでできる業務を充実させることで、社内に豊富にある営業情報のリソースを活かす。そのことで、検討フェーズへの対応やプッシュ型サポートなど、デジタルを活用した営業機会を最大化し、新たな商談機会・成約帰結の最大化を実現する。そのために同社は、独自の「デジタル営業強化システム」を開発した。

Treasure Data CDPを基盤とする「デジタル営業強化システム」

Treasure Data CDPは、SFAの商談情報、基幹システムに格納される契約情報、機器などの調達に関わる情報、保守運用の実績など、あらゆる顧客情報を統合する。デジタル営業強化システムはこれをベースに、トレジャーデータの提供するジャーニーオーケストレーションとも連携。モバイル端末を通して、営業を「情報武装化」する機能が、実装された。

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「Mapツール」は、文字通り地図上で顧客情報をプロットする機能。「訪問間隔が開いているなどフォローが不十分な顧客は青色のピンで機器の入れ替え期が近づくなどオポチュニティ(営業機会)のある顧客を赤で表示する」と塚越氏。位置関係とともに、顧客のステータスが一目瞭然でわかるインタフェースだ。
地図上の顧客名を選択すると「Mobileツール」が起動する。個別の顧客に関して、カストマーエンジニア部門が実施した保守の実績、SFAに登録された商談や面談情報、営業活動の履歴など、より詳細な情報にアクセスすることも可能だ。端末を傾けると画面の方向が自動回転するなど、モバイルで使いやすいUXにも配慮されている。

さらに「eMailツール」は、最新のオポチュニティの発生を自動で通知。Treasure Data CDPのジャーニーオーケストレーションのシナリオに基づき、顧客に対するアクションのタイミングと適切な内容を提案してくれる。
具体的には、アクションを推奨するメッセージが、メールの文案付きで送られてくる。営業は数回のクリックでメールを送信できるし、場合により宛先を追加したり、オリジナルの文章を添えて、よりパーソナライズしたコミュニケーションを行うこともできる。

顧客カバレッジ、営業の間接工数を改善

運用開始から半年に満たないが(取材時)、「ユーザーからの反響も高く、営業の増力化に手ごたえを感じている」と、伊橋氏は評価する。

重視するのは、営業の顧客カバレッジだ。営業を行うのが人間である以上、商談機会などにより、どうしてもコミュニケーションに偏りがでる。デジタル営業強化システムが、顧客アカウントの状況把握を支援することで、より幅広い顧客に対し、適切なタイミングで、適切なアクションをとりやすくなった。直接的な営業以外のライトなコミュニケーションを含め、顧客カバレッジを高めることで、トータルで営業の品質が向上し、商談が発掘されていく。

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また、顧客ごとの情報提供が、充実したことも大きい。営業活動の前提として、顧客の状況をリアルタイムで把握することは極めて重要であり、従来はそのために営業が相応の工数をかけていた(詳細後述)。
デジタル営業強化システムにより、モバイル端末から、統合されたデータへ簡単にアクセスし、メールで素早く連絡できる環境が整った。常に適切な状況把握に基づき、対面/非対面を組み合わせた「途切れることのない情報提供」(伊橋氏)を行うことができる。

最後に、伊橋氏が挙げたのは、営業活動の見える化だ。扱う商材が幅広い分、オポチュニティは多岐にわたり、中には営業が見落としてしまうケースもあった。これらが統合されたデータから引き出され、推奨行動まで通知されるメリットは大きい。営業マネージャーがメンバーの営業状況を把握し、指導するなど、マネジメント面での効果もあるという。

成果は数字にも現れている。運用後2カ月で、営業の顧客カバレッジは、3.2%向上した。およそ8000人のお客様接点の社員が利用するシステムだけに、事業へのインパクトは大きい。「お客様接点を増やせば、自ずと商談機会が増える。商談機会が増えればパイプラインが増え、実績も増える」と伊橋氏は手応えを語ってくれた。

さらに、営業の間接工数は、全体で80人月分削減された。前述した顧客の状況把握にかける作業が短縮されたためだ。

例えば、機器のトラブルの状況などを知らずに商談を進めようとすれば、顧客の信頼を失いかねない。そのため、営業担当者は訪問の前日などに、入念な準備作業を行うが、データが分散的に管理されていた従来の環境では、さまざまなシステムを行き来して、情報をとらねばならなかった。

デジタル営業強化システムにより、この作業が簡便になった。ある営業担当者は「1社30分かけていた訪問準備が、5分で済むようになった」と評価をいただいた。

こうした運用のなかで伊橋氏は、モバイルに最適化されたUXの重要性を強調する。数多くの顧客を担当する営業が、すべての顧客アカウントを漏らさず管理するのは、パソコン作業を前提とする従来の仕組みだけでは困難だった。

モバイルに最適化されたデジタル営業強化システムなら、短時間で顧客情報をチェックし、外出時の空き時間に近くの企業を訪問したり、メールや電話でアプローチするなど、フットワークのよい営業活動も可能になる。モバイルを軸に「さまざまなストーリーをミックスして」(伊橋氏)、フィールドセールスの改革にチャレンジしているのだ。

将来性を見据えたCDP選定

伊橋氏とともに導入プロジェクトをマネジメントした山影氏は、「私たちのやりたいことに必要な機能が、パッケージとしてそろっていた」と、Treasure Data CDPを評価する。
ツールを選定する際に重視したのは、顧客データを統合するCDPと、Webログとの親和性、SFAやメール配信等多様なシステムとの接続だ。Treasure Data CDPが標準で搭載する外部システムとの豊富なインタフェースが、採用の決め手になったという。
背景には、ビジネス環境により、営業のため活用するデータは変化するという、山影氏らの見通しがある。マーケティングテクノロジーは日々進化しており、新たなソリューションの導入も、常に検討しなければならないだろう。
現場の要請に従ってデータ活用をアジャストするたびに、大規模な開発をベンダー側に依頼していては、現代のスピード感には対応できない。アジャイルでの保守・運用を前提にすると、拡張性と柔軟性、社内での使いやすさは、最も優先されるポイントだったのだ。

今後の進化として取り組むのは、生成AIの活用だ。トレジャーデータのAIエージェントファウンドリーを活用し、Map、Mobile、eMailの各ツールの工数が必要となるオポチュニティのリスト抽出に活かすPoCを進行中だ。
「Treasure Data CDPに格納されたデータから、生成AIがオポチュニティを判別する仕組みを検証している」と塚越氏。人間の目では導けないオポチュニティも、AIエージェントなら発見できる可能性がある。また、ルールベースのAIは、時間とともにルールと実態のズレが生じる可能性があるが、AIエージェントは環境に合わせた自律的な判断が可能だ。「生成AIとツールとの連携で、さらに夢が広がる」と期待を寄せる。

情報1グループでは、15年にわたり営業を経験した伊橋氏を先頭に、エンジニア集団がTreasure Data CDPおよびデジタル営業強化システムの開発、運用に取り組んでいる。現場への洞察と、ソリューションとして形にするエンジニアリング力が、早期に成果を挙げられた要因だろう。富士フイルムビジネスイノベーションジャパンは今後も、自社のBtoB営業に即した独自システムを進化させていく。

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