【AI×エンタメの本音】「推しの新曲がAI生成」だったら、あなたは聴き続けられますか?
公開日 2026/05/202026年5月16日に放送されたTOKYO MX「田村淳のキキタイ!」の番組内コーナー『キキタイ!データラボ』をご視聴いただいた皆様、ありがとうございました!番組では「AI×エンタメに対する日本人の本音」をテーマに、様々な調査データを掛け合わせてAI解析を行いました。
そこで今回は、番組出演の「あとがき」として、視聴者の方からも特に反響の大きかった「世代別の価値観ギャップ」と「意外な本音」について解説していきます。

AIが可視化した「5つのエンタメペルソナ」
公的機関やシンクタンクが発表した複数の意識調査をもとに、AIが現代の日本人のエンタメ受容度を5つのキャラクター(ペルソナ)に分類しました。まずは自分がどこに近いかイメージしながら見てみてください。
| ペルソナ | 年代 | キャッチ |
|---|---|---|
| ①AIネイティブZ世代 | ||
| ①AIネイティブZ世代 | 10-20代前半 | AIは最新のエンタメツール |
| ②効率化イノベーター | ||
| ②効率化イノベーター | 30代 | AIで新しい体験を創りたい |
| ③推し文化コア層 | ||
| ③推し文化コア層 | 30-40代 | 推しの本物性こそが魂 |
| ④様子見慎重派 | ||
| ④様子見慎重派 | 40-50代 | 便利そう、でも任せきれない |
| ⑤デジタル距離派 | ||
| ⑤デジタル距離派 | 60代以上 | 人間の表現が好き |
このように、単に「賛成・反対」の一言では片付けられない、多様なグラデーションが存在しています。
データで浮き彫りになった「本物への執着」
それぞれのペルソナが持つこだわりをみると、面白いギャップが見えてきました。
Z世代が「使うのも創るのも得意」である一方、③の推しコア層は「AIは便利で面白いけれど、私の推しにだけは嘘(AI)を混ぜないで、明確に区別して!」という強い意思があるのです。
一方で、最もアナログに見える⑤のデジタル距離派は「人間が作ることの価値(人間尊重度95)」を最も大切にしており、ペルソナ間でエンタメに求める「本質」の差がデータにクッキリと刻まれています。
「推しのAI曲」への本音
番組のフリップでも特にスタジオが騒然とした、「推しの新曲がAI生成だったら聴き続ける?」という代表質問へのペルソナ別の回答がこちらです。
【推しの新曲がAI生成だったら聴き続ける?】
| ペルソナ | 回答 | 理由(本音) | 変化のポイント |
|---|---|---|---|
| ①AIネイティブZ世代 | |||
| ①AIネイティブZ世代 | YES | Vtuber等で慣れている。「誰が歌うか」のリアルさは重要じゃない | キャラクターとしての魅力を重視 |
| ②効率化イノベーター | |||
| ②効率化イノベーター | 中立 | 人間との共同制作なら歓迎。完全AIなら「応援先」が消えてしまう | テクノロジー好きでも経済行動は保守的 |
| ③推し文化コア層 | |||
| ③推し文化コア層 | NO | 歌詞の裏にある「本人の今(人生)」が聴けなければ課金する意味がない | 人間のドラマに価値を払っている |
| ④様子見慎重派 | 中立 | CD売上などが減るはず。エンタメ業界自体が持つのだろうか | 業界の仕組みや未来を心配 |
| ⑤デジタル距離派 | NO | 歌は人生経験の結晶。AIに人生はない | 表現者のバックボーンを最重視 |
非常に興味深いのは、テクノロジー推進派であるはずの「②イノベーター」から出た、「完全AIになると応援先(人間)が消えるから中立」という意見です。どれだけ技術が進化しても、私たちがエンタメにお金を払うのは「人間を応援したいから」という本質的な欲求があるからなんですね。AIネイティブ世代とそれ以外には、明確な境界線があることが明らかになったのではないでしょうか。
死生観を問う究極の質問
さらに番組では、エンタメの枠を超えた「亡くなった祖父母がAIで蘇ったら話したい?」という究極の質問についても、AIによる本音分析を行いました。
【亡くなった祖父母がAIで蘇ったら話したい?】
| ペルソナ | 回答 | 理由(本音) | 変化のポイント |
|---|---|---|---|
| ①AIネイティブZ世代 | |||
| ①AIネイティブZ世代 | 中立 | 便利そう、でも「お墓参り」との本質的な違いが分からない | デジタルへの抵抗はないが、意味を見出せない |
| ②効率化イノベーター | |||
| ②効率化イノベーター | NO | AIによる偽の記憶が、本物の思い出を塗り替える怖さを知っている | 技術の限界とリスクを冷静にコントロール |
| ③推し文化コア層 | |||
| ③推し文化コア層 | NO | 本人不在の声や姿は、私の愛する「推し」と同じでただの偽物 | どこまでも「本人の実存」にこだわる | ④様子見慎重派 | 中立 | 遺族全員が心から納得するならアリ。誰かの独断で進めるのはダメ | 周囲の合意や社会的なルールを重視 |
| ⑤デジタル距離派 | YES | お盆に会いに来る(帰ってくる)のと本質は同じ。技術はただの手段 | 目的が「再会」であれば、手段は問わない |
非常に興味深いのは、普段はデジタルに最も慎重な「⑤距離派」が、この質問に対しては「お盆と同じ」として唯一明確に「YES」と回答している点です。逆に、デジタルに親しいはずの「②イノベーター」や「③推しコア層」は、偽物に本物が侵食されるリスクを本能的に察知して強い拒絶を示しました。この質問では、デジタル距離派とそれ以外という境界線が浮かび上がる結果となりました。
「関係性のデザイン」へ
今回の分析を総括すると、AI×エンタメの真実は「技術でどれだけリアルなものを創れるか」ではなく、「私たちがお金を払ってでも応援したい『人間の実存(ドラマ)』をどう残すか」というフェーズに入っています 。
もっとも警戒すべきは、効率化の波に押されて完全AI化が進んだ結果、受け手側が「気づいたら本物の感動や、心から応援したい対象(人間)が消えていた」と冷めて、エンタメへの熱量や経済行動そのものが消失してしまう事態です 。
そうならないためには、AIを単なる人間の代替品にするのではなく、人間の情熱を拡張するための共同制作のパートナーとして位置づけること 。そして、ファンが愛してやまない「アーティストの今(人生)」という聖域を守りながら、新しい体験を提案していくこと 。この「人間への敬意」を真ん中に置いた関係性のデザインこそが、これからのAI時代にエンタメ業界をより豊かに発展させていく、データが教える未来への正解なのではないでしょうか
次回のトレンド解説でも、生活者のリアルな変化をデータから読み解いていきます。どうぞお楽しみに!
著者:宮野 淳子
トレジャーAI
最高マーケティング責任者・CMO
最高ブランド責任者・CBO
ロレアル パリ日本市場の立ち上げを経験後、アマゾン、ジョンソン・エンド・ジョンソンを経て、ゴディバでCDOとしてマーケティングおよびDX領域を歴任。
2024年11月よりトレジャーAIのCMOに就任。AIとMAを一体化したCDPの力で、企業の顧客体験の未来を切り拓くことをミッションに、市場拡大を牽引している。Monash大学大学院およびロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)大学院卒業。
分析に用いた主な参照データ:
- 博報堂「AIと暮らす未来の生活2025」
- ゲームエイト「生成AI活用意識調査2025」
- 総務省「令和7年版情報通信白書」
- 日本財団「18歳意識調査 第57回 生成AI」
- オトナル「AIコンテンツへのイメージ年代別調査」
