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Dr.stretchが目指す、AI×CDPによる顧客理解の深化とコミュニケーション革新

事例顧客
  • 株式会社nobitel 
    取締役COO
    正木 俊介氏
  • Treasure Data, Inc 
    Executive Chairman & Co-Founder 
    芳川 裕誠

ストレッチ専門店「Dr.stretch(ドクターストレッチ)」は、コンディショニング領域でグローバルNo.1のプラットフォーマーを目指し、国内外で店舗展開を加速している。

今後さらなる事業成長のために必要だと考えたのが、データの活用だ。ストレッチは継続してこそ体質改善やパフォーマンス向上につながるため、顧客への価値提供という面でも、ビジネス的なLTV向上の面でも「いかに続けてもらうか」が重要となる。しかしこれまでは、主に新規顧客の獲得に注力しており、CRMによる既存顧客へのアプローチは十分になされていなかった。

こうした課題を解消すべく、同社はトレジャーデータのCDPを導入。実際にどのような課題解決を見込んで導入し、どのような成果が得られているのか。「Dr.stretch」を展開するnobitel 取締役 COOの正木俊介氏が詳しく語った。

ペルソナの明確化
社内インフラではできていなかった名寄せをCDPで実施。その結果、真のユニークユーザーを特定したことでデータの正確性が向上し、曖昧だったペルソナが鮮明に見えてきた。
CPA(顧客獲得単価)の最適化
ペルソナが明確になったことで、顧客理解が高まり適切なターゲットへの広告配信が可能に。精度が向上した結果、無駄な出稿が減りCPAの最適化が進んだ。
リマインド配信による予約促進
「来店時の次回予約なし」や「キャンセル後の未予約」の顧客に対し、リマインドを自動送付。機会損失を防ぎ、次回予約や再予約が増加。

コンディショニング領域の市場拡大を目指して

「Dr.stretch」は、国内に約230店舗、海外も含めると約270店舗を構えるストレッチ専門店だ。(2025年12月時点)2023年にファンドの出資を受けて以降、その出店スピードはさらに増している。現在は直営店だけで国内外で年間約25店舗、フランチャイズも含めると国内だけでも年間40店舗以上の出店を行うなど、勢いは加速する一方だ。

近年は海外でのニーズが高く、直営店をシンガポール、台湾、マレーシアに計21店舗展開。フランチャイズ店舗は中国、UAEに加え、2025年末にはインドネシアにもオープンした。加えて、フィリピン、オランダ、ベトナム、韓国など、世界各国から「出店してほしい」というオファーが絶えない。「ストレッチ専門店」という業態は世界的にも希少であり、その独自性が数多くのオファーを呼び込んでいるのだ。

同社のメインサービスは、トレーナーが1対1で施術を行う「コアバランスストレッチ」になる。セルフストレッチとは異なり、トレーナーに身体を預けることで可動域を最大限に広げ、表層筋だけでなく、深層筋(インナーマッスル)にまでアプローチできる。リラクゼーションを目的としたマッサージとは一線を画し、身体のパフォーマンス向上や、怪我・不調の予防といった根本的な体質改善が期待できるのが特徴だ。

こうした独自の価値をいかに顧客へ伝え、継続利用につなげるか。それが同社のビジネス戦略における重要な鍵となっている。

図:ストレッチサービスの位置づけのイメージ

nobitelが最終的に見据えるのは、コンディショニング市場の拡大だ。正木氏によれば、ジムなどの「フィットネス市場」は5,000億円強、マッサージなどの「リラクゼーション市場」は、8,000億円弱の規模があると言われている。この2つの巨大市場の間に位置するのが、彼らの主戦場である「コンディショニング領域」だ。

我々ほどしっかりとメソッドを構築し、カリキュラム化して提供できているサービスは他にないと自負しています。まさにブルーオーシャンだからこそ、これだけのスピードで出店ができているのです。 健康寿命の延伸が求められる今、この市場は間違いなく成長します。今後はピラティスなど他のコンテンツも取り込みながら、コンディショニング領域におけるグローバルNo.1のプラットフォーマーを目指します

(正木氏)

CDPによる解決を見込んだ5つの課題とは

コンディショニング市場を切り拓き、プラットフォーマーとしての地位を確立するためには、データ活用の高度化が不可欠となる。しかし、当時の同社には乗り越えるべきいくつかのハードルがあった。

正木氏は、特に解決すべき5つの経営課題を特定。これらは既存の仕組みでは対処できず、トレジャーデータのCDP導入こそが解決の鍵になると考えた。

①データのサイロ化(顧客実数の不透明さ)

これまでも社内インフラにデータは蓄積されていたが、顧客IDの統合(名寄せ)ができていなかった。膨大なデータが存在していても、実質的なユニークユーザー数が把握できず、データの価値を活かしきれていなかった。

②顧客解像度の低さ(売り切り型からの脱却)

従来は新規獲得と回数券販売に注力するあまり、既存顧客への継続的なフォローが充分ではなかった。「来てくれた人に売る」ことに終始し、来店間隔が空いた顧客への再訪促進などができていなかった。顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションでLTVを高める必要があった。

③機会損失の発生(稼働率の壁)

現場トレーナーの多くが正社員である同社にとって、人件費(固定費)に対する「稼働率」の向上はトップラインを伸ばす生命線になる。しかし、需給バランスの調整が難しく、予約枠の間に中途半端な空き時間が生じる「死に枠」が発生していた。この無駄をなくし、機会損失を防ぐことが急務だった。

④勘と経験への依存(サービス品質のばらつき)

施術のノウハウがトレーナー個人の感覚に依存しており、組織としてのナレッジ共有が遅れていた。個人の経験値も重要だが、グローバルブランドとして品質を担保するには、全てのトレーナーが一定水準以上のサービスを提供できなければならない。そのためには、勘や経験をデータ化・形式知化する必要があった。

⑤非効率な新規獲得施策(ターゲット精度の低い広告)

マーケティングもまた担当者の経験則に頼っており、ターゲットの解像度が低いまま、MetaやGoogleで類似の広告配信を繰り返す状況だった。リード(見込み客)の所在をデータで正確に捉え、やみくもな出稿から脱却し、獲得効率を最大化したいと考えていた。

図:トレジャーデータのCDPに解決を期待する5つの課題

顧客の実像把握と、LINE連携によるCRMの自動化

同社はこれらの課題を解決すべく、2025年2月にトレジャーデータのCDPを導入した。導入から間もない段階ではあるが、すでにいくつかの重要な領域で具体的な変化が起き始めている。

最初にメスを入れたのは、「データのサイロ化」の解消だ。 バラバラだった顧客データを名寄せして統合した結果、実体に基づいた正確なユニークユーザー数を把握できるようになった。顧客の実像が正確に見えたことで、精度の高い施策を打つための土台が整った形だ。

この統合データを活用し、目に見える成果を上げているのがCRM領域である。 同社は「LINEミニアプリ」を導入し、CDPと連携させることで顧客接点の統一化に着手。たとえば、来店当日に次回予約を入れなかった顧客に対し、LINEで自動的にリマインドを送付する仕組みや、予約をキャンセルしたまま3日間動きがない顧客に対して再予約を促すメッセージを配信する仕組みを構築した。その結果、来店時に次回予約を取る習慣がなかった顧客が次回予約を取ってくれるようになったほか、キャンセル後に再予約してくれるケースが増えるなど、LTV向上に繋がる成果が数値として表れている。これらは従来、店舗スタッフの手作業や感覚に頼っていた部分だが、データによる自動化が確実に機会損失を防いでいる好例だ。

さらに、マーケティングから店舗運営まで、データに基づいた最適化が進んでいる。 広告施策では「ターゲットと手法」をデータで可視化することで、効率的な顧客獲得(CPAの適正化)が実現しつつある。 店舗運営においても、勘と経験ではなくデータに基づいた需給予測やシフト作成を行うことで、「死に枠」の最小化による店舗稼働率の上昇に向けたトライも始まっている。

データの土台を整え、少しずつ動き始めたところです。今後はさらにデータをうまく活用していけるように取り組んでいきたいと考えています。需給予測やスタッフの稼働率向上という山に向かって、ようやく登り始めたというイメージですね。また、分析を通じて『自分自身の健康のために投資できる40~50代』というペルソナ像も明確に見えてきました。今後は顧客データを活用しながら、物販も含めたクロスセルやアップセルも仕掛けていきたいと考えています

(正木氏)
図:実行を始めた施策や今後実行予定の施策、すでに得られている成果

グローバルNo.1を目指すには、データがすべての肝

今後の構想として描いているのが、AIなどの先端技術と、蓄積されたデータ・ナレッジを掛け合わせた「パーソナライズされたダイナミックプライシング」への挑戦だ。 顧客の来店が少ない時間帯に優待価格を提示したり、急な空き枠に対してピンポイントで顧客を誘致したりといった、需給に合わせた柔軟な価格設定の実現を目指している。

そしてその先に見据えるのは、あくまでコンディショニング領域における「グローバル・プラットフォーマー」としての地位だ。

データがすべての肝になると考えています。今後もトレジャーデータを活用し、データを起点とした施策を推進していきたいと考えています

(正木氏)

nobitelにおけるデータ活用やCRMの取り組みは、まだ始まったばかりだ。しかし、これまで未着手の領域が多かったということは、裏を返せば、それだけ手つかずの「伸びしろ」が潤沢に残されていることを意味する。今後はさらに詳細なデータを取得・蓄積し、それを成長の追い風に変えていくことだろう。


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