事例顧客
  • ヤマハ発動機株式会社
    経営戦略本部 デジタル戦略部
    データドリブンビジネス推進グループ
  • 藤本 勝治氏

世界180以上の国と地域に拠点を持つヤマハ発動機株式会社は、Treasure Data CDPを軸に、グローバルでデータ活用を展開してきた。メーカーならではの事業構造の制約や、多様な顧客接点といった課題を乗り越えながら、OMO(Online Merges with Offline)で独自の「顧客情報基盤」を構築している。
こうした同社のマーケティング改革の中核を担っているのが、経営戦略本部 デジタル戦略部 データドリブンビジネス推進グループの藤本勝治氏。Treasure Data CDPを使い込んできた藤本氏に、その導入の経緯と活用、さらに新機能Engage Studioの利点と課題について、率直な意見を語ってもらった。

オンライン/オフラインの行動データを統合
Webアクセス履歴やリアルイベントでのアンケートデータをTreasure Data CDPに統合し、顧客理解を深めた
PBPでガバナンスを強化
グローバルにCDP活用を進める上で生じたガバナンスの問題をPBP(Policy-Based Permission)の導入で克服した
工数約30%削減、コスト約20%削減
Treasure Data CDPのメール配信ツールEngage Studioを試用しての実績

顧客行動のデジタル化に応じた「顧客情報基盤」を構築

ヤマハ発動機は、オートバイを中心とするランドモビリティ、船や船外機などマリン商材を中心に、年間2兆5000億円を売り上げるグローバル企業。180を超える国と地域で事業を展開し、ASEANの売上が40%、北米が20%を占めるなど、海外売上比率は94%を超える。

各国でTreasure Data CDPを導入し、データ活用を進める同社だが、どのような経緯でデジタルマーケティングへの変革を推進しているのか? 藤本氏は、背景にある顧客行動の変化を、自動車の購買を例に解説した。

自動車のユーザーは、購入前に何回店舗を訪れるのか? ある調査では、2005年の段階で、顧客は平均5回ほど店舗に通って、情報を収集し製品を吟味していた。しかし、現在では店舗訪問の回数は、2回未満にまで減少しているという。80%の顧客は店舗に来るタイミングで、すでに何を買うか決めており、95%の顧客はデジタルで情報収集を行っている。「10万円を超える高額な商品の場合、事前にインターネットで情報を調べるのが当たり前になった。はじめから店舗を訪れて購入することはあり得ない」(藤本氏)。

そんななかでは、販売する側の顧客理解のあり方も変わる。以前は直接対応する店頭のスタッフが顧客の一番の理解者だったが、今はオンラインでデータを収集するGoogleやAppleが、その立場を獲得している。「顧客行動がデジタルシフトしているのに、今まで通り店舗中心のマーケティングでよいのか?」藤本氏は大きな危機感の中で、マーケティングのデジタル化、CDPを軸としたデータ活用を推進する。

藤本氏は、顧客の行動を「認知」「興味」「検索」「訪問」「購入」「体験」「シェア」の7段階に分類。各接点で得られる顧客データをつなげ、一貫した顧客理解を深めていく。そのためには顧客データを統合して分析する環境、同社のいう「顧客情報基盤」が必要なのだ。

Treasure Data CDPを中心にカスタマージャーニーを可視化

まず、課題となったのはデータの収集だ。同社のビジネスでは、メーカーから小売店を通してエンドユーザーに販売するBtoBtoCの流通が基本。顧客との接点を持つ小売店は、基本的に資本関係のない第三者だ。メーカーは製品保証を通じて基本的な顧客データは入手しているものの、購買の経緯や目的など、詳細な情報を取得することは難しい。

一方オンラインでは、自社の製品サイトなどからブラウザのクッキー情報は取得できる。しかし、それらはあくまで個人が特定されない、アノニマスデータだ。どの顧客が、どのような行動を取っているのか、個人単位で把握することはできない。

こうした状況を「接点はあっても、データが足りていなかった」と表現する藤本氏。顧客が前述の7つのステージを進む間には、オンライン/オフラインの多様な接点が存在する。リアルに顧客像を理解するには、チャネルを横断して、各接点のデータをつなげる必要があったのだ。

そこで藤本氏が着手したのが、Treasure Data CDPによるWebサイトの分析だ。導入に際してシステム開発の必要がない、Webサイトにタグを埋めるだけでデータを収集できるなど、手を付けやすい条件がそろっていた。

CDPを活用すれば、製品サイトの訪問・閲覧履歴と製品の購入(Webサイトでの保証登録)のデータをひも付けて分析できる。これにより、検討開始の時期や、比較した製品、意思決定に寄与したコンテンツなど、オンラインでの顧客行動が明らかになった。「検討プロセスを可視化できたことが、大きな一歩だった」と藤本氏は、この取り組みを評価する。

もちろん、オフラインでの行動も分析する必要がある。例えば従来は、展示会などのイベントに集客しても顧客データが手元に残らず、効果検証が難しかった。顧客とのダイレクトな接点を生かすことは、メーカーにとって重要な課題だ。

そこで藤本氏らは、会場に設置したQRコードからWebフォームへ誘導し、アンケートを収集する仕組みを構築した。顧客の連絡先とあわせて、バイク免許の有無や自社製品の利用状況といった属性情報を取得する。さらに、許諾を得たうえで、端末から取得されるクッキー情報と連携することで、属性データとオンライン上の行動データをひも付けて取得。これならば後の行動まで追跡し、リアルイベントの効果も詳細に検証できる。

さらに同社は、基幹システムに格納されている購買データを、トレジャーデータのETLツール「embulk」を用いてTreasure Data CDPに連携。続いて製品保証登録やコールセンターの問い合わせ履歴、レンタル利用、Webアンケートといった、社内に散在していたあらゆる顧客データもCDPに統合していった。藤本氏は顧客データを一元的に管理するDWHとしてCDPを位置づけ、CRMなど外部ツールと連携することで、全社的なマーケティングを支える「顧客情報基盤」を構築している。

ここに至って、認知から興味関心、検討フェーズ、さらに購買まで、OMOでカスタマージャーニーを可視化する仕組みが完成した。「Just in Time でマーケティング施策を実行できるデータ活用の流れが整った。会議室の中で議論するのではなく、リアルなデータからカスタマージャーニーを描こう!と社内に呼びかけている」と藤本氏。日本でできた顧客情報基盤活用の事例を、ASEANを中心とする各国に展開している。

なお、CDPをグローバルに展開する中では、想定外の問題も明らかになった。

同社では、各国からの利用申請を受け、用途に応じて複数のデータベースを作成。それぞれの国のデータのみにアクセスできるよう、ユーザー権限を設定していた。

しかし、ユーザー自身がデータベースを作成できる仕様であったため、管理が複雑化した。データベースは150以上まで乱立し、人事異動などの影響で管理責任が不明確になるなど、CDPの運用に支障をきたす問題が顕在化していた。

同社はガバナンス強化のため、PBP(Policy-Based Permission:ポリシーベースの権限管理)の導入を決定する。一般的には特定のユーザーごとに権限を設定するのに対し、国や部門、役職などに応じてあらかじめ作成したユーザーグループに対し、権限パターン(ポリシー)を割り当てるのがPBPの仕組みだ。人事異動や組織変更があっても権限管理が破綻しにくく、グローバル展開においてもガバナンスを保ちながら、システムを柔軟に運用できる。

藤本氏によれば、PBP導入前の権限パターンは1000を超え、計画から本番運用までには、約半年を要したという。現在は約100のデータベースと150のポリシーで安定的に運用しており、グローバル展開に適したガバナンス体制が整っている。

マーケティングの新たな可能性を開くEngage Studio

このように同社は、Treasure Data CDPにより、目指してきた顧客情報基盤を構築し、デジタルマーケティングを推進している。ここで藤本氏は、マーケティング実務上のデータ管理に問題意識を持った。

「顧客情報基盤として、せっかく1カ所に集約したデータを、マーケティングの段階では外部ツールに分散してしまう」という問題だ。CDPから外部のCRMツールにデータを出力し、メール配信など顧客コミュニケーションを行ってきたが、これをCDP内で完結できれば、コストも業務効率も改善するはず。藤本氏は以前からトレジャーデータに対し、マーケティングアクションツールの実装を要望していた。

こうした声を受けて、トレジャーデータが2025年にリリースしたのが、AIを搭載したメール配信MAツールのEngage Studioだ。前述のようにヤマハ発動機では、データの蓄積と変換を行うDWH、複数のツールへデータを連携する「データハブ」(藤本氏)としてTreasure Data CDPを運用してきた。Engage Studioの登場により、「いよいよマーケティングツールとしての新しい使い方ができる」と、藤本氏は期待を寄せる。

早い段階でEngage Studioを試用した藤本氏は、「GUIベースで非常に使いやすい。日英対応ではじめから日本語の画面があるのはありがたい」と評価。セグメントの作成からメール配信までの工数は約30%削減、メール配信のコストは約20%削減したという。

また、Engage Studioと連動するAudience Studioについても、使い勝手の良さを実感している。顧客の属性データ、行動データのいずれからでも、フレキシブルにセグメントの条件設定が可能で、条件に該当する顧客数も即時表示される。SQLのスキルを持たないマーケティング担当者でも自らデータを扱い、実態を確認しながら仮説を立て、セグメントを設計できるのだ。

最後に藤本氏は、Treasure Data CDPの今後の進化に対する期待として、Webフォーム機能の実装と、最新の顧客データ維持に言及した。現状では、外部のWebフォームと連携しているが、メール配信同様にCDPで完結すれば業務効率は高まる。

さらに、顧客データの名寄せに一部CRMツールを使用し、データを最新の状態に保っているという藤本氏。「SQL不要の分析機能など、Treasure Data CDPはDWHとしては非常に優秀だ。最新の属性データが常に維持される環境ができれば、CDPとしての完成度はより高まる」と鋭く指摘する。

今回藤本氏からは、現場でTreasure Data CDPを使い込み、課題を突き詰めてきたユーザーならではの貴重な意見をいただいた。トレジャーデータは、こうした声を真摯に受け止めながら、顧客データの中核を担うプラットフォームとして、Treasure Data CDPの進化に取り組んでいく。

自動車業界向け CDPユースケース

モビリティ・自動車業界のCDP活用事例を、
今すぐダウンロード

Treasure Data CDP事例集
モビリティ・自動車業界編

導入の背景から、活用後の変化までを公開

おすすめ

View All

DX・マーケティング知恵袋

AIと顧客データの現在と未来

arrow

マーケティングテクノロジー投資を最適化するためのポイント

「そのMA、本当に顧客を『動かせ』ていますか?」AIが変える顧客エンゲージメント ~次世代MA Engage Studioとは~

arrow

DX・マーケティング知恵袋

顧客データが促進する効率性、収益性、成長性

arrow
ホーム > イベントレポート > Yamaha Motorにおける、TDグローバル展開とEngage Studio活用