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130%の売上成長を支えるタカラトミーモールの多彩なデータ活用

事例顧客
  • 株式会社タカラトミー
    メディア戦略室 D2C・CX戦略部 D2C・DX推進課 課長
    平位 俊雄氏
  • 株式会社タカラトミー
    メディア戦略室 D2C・CX戦略部 D2C・DX推進課 上級主任
    井上 慶人氏

世界中で愛される“総合アソビメーカー”への成長を掲げる株式会社タカラトミーでは、自社ECサイト「タカラトミーモール」での顧客とのコミュニケーションにTreasure Data CDPを活用している。CRMやUI/UXの改善に留まらず、機械学習による高度な分析で顧客像を推定し、新たなサービスを考案するなど、顧客データを使ったユニークなアプローチが興味深い。
データ活用とECサイト運営を担うD2C・DX推進課の平位俊雄氏、井上慶人氏が語る実践と展望には、顧客理解を事業につなげるヒントが詰まっていた。

130%の売上成長
Treasure Data CDPの本格運用を開始し、ECサイトの売上が大きく伸長
メルマガECサイトへの遷移率4.5倍
Web上の行動データを活用したセグメント作成で、メルマガからECサイトへ効率よく送客
新サービス検討を後押しする機械学習
Treasure Data CDPのAutoMLを活用し、「トミカ」ファンの需要を可視化した

「大人層」に新たな「アソビ」体験を提案

タカラトミーは、「トミカ」や「プラレール」、「リカちゃん」「BEYBLADE X」といったロングセラーブランドを持つ老舗玩具メーカー。創業100年を迎えて、「おもちゃ会社」から「アソビ会社」への進化を掲げ、体験の創出に取り組む。

タカラトミーモールは、そんな同社の商品をD2Cで販売する公式ECサイトだ。2023年に平位氏らのD2C・DX推進課が立ち上がり、Treasure Data CDPの本格運用をはじめて以来、ECは大きく売上を伸長。2024年度の売上は前年比130%と、過去最高の成長率を記録している。

日本国内で少子化が進むなか、タカラトミーは大きく2つの成長戦略を掲げている。一つは海外展開を含む「地域軸の拡大」、もう一つは子ども向けにとどまらない「年齢軸の拡大」だ。このうちタカラトミーモールは、後者の年齢軸の拡大を牽引している。平位氏によると、全社の売上構成比は「子ども・ファミリー層」の約30%に対し、「大人層」は60%を超えるという。ECにおける施策も、大人の利用を想定したものが中心だ。

具体的には、キダルト(子どもの頃に好きだった玩具やキャラクターを大人になっても趣味として楽しむ人)向けの限定商品の展開、各ブランドの世界観をより深く楽しむ提案などで、メーカー直販の付加価値を提供する。キダルトホビーレーベル「T-SPARK」は、精巧なアクションプラモや、往年のロボットアニメを再現したリアルトイなど、コレクター心を刺激する玩具をラインアップ。そのほか、リアリティを追求したダイキャスト製ミニカー「トミカ プレミアム」、大人の方により楽しんでいただける商品を作りたいという想いから関節が動く美しい可動式ボディ「ネオリカボディ」を採用した「フォトジェニックリカ」シリーズ、そして10万円を超える大型商品も存在する「ダイアクロン」と、おもちゃファンならずとも心くすぐられる商品がECサイトにそろう。

いまや大人も熱中する“スポーツ”となった「BEYBLADE X」では、玩具とアプリが連動し、アプリ内で抽選で手に入るチケットを利用してタカラトミーモールでレアアイテムを購入または入手できるなど、ブランドとECを連動させた施策も展開している。

CDPのデータを基に自動でメッセージをパーソナライズ

このように、タカラトミーモールは豊富なオリジナルブランドを軸に、幅広い層に新しい「アソビ」を提案する。平位氏は「もっとも大切にしているのは『夢中になれるアソビ』だ」と語り、アソビが「見つかる」「買いたくなる」「分かち合える」体験により、遊びたい!の気持ちが循環していく場所を目指しているという。

その循環を支えるのが、CDPを中心とするデータ活用だ。Treasure Data CDPには、タカラトミーモールに登録される会員情報、Web/アプリの行動履歴と購買履歴、さらに商品に同梱されるアンケートなどのデータが格納される。多彩な接点のデータを、ひとつのIDに統合することで顧客理解を深め、さらに多彩な施策に活かす狙いだ。

現状で最も活用が進んでいるのはCRMの領域だ。MAツールを用いたメールマガジンでは、約30種類のシナリオを設定・運用しており、さらに手動で作成するコンテンツも年間約100本配信している。これらの配信は、Treasure Data CDP上で作成・更新される顧客セグメントに基づいて配信対象の見極めを行っている。

また、CDPと連動して商品情報がメールコンテンツに自動で反映される仕組みになっている。「商品掲載のセクションは、新商品の発売などに合わせて自動でアップデートされ、在庫のない商品は自動的に通知から除外する仕組みがある」と井上氏は説明する。

バースデーメールの場合、件名にはお客様の氏名を表示し、コンテンツは顧客ごとに最適化したレコメンド商品の提示が有効だ。こちらも、過去の購買履歴やコンテンツ閲覧履歴など、Treasure Data CDPのデータに基づいて掲載商品がパーソナライズされる。

セグメントは基本的に、過去に購入した商品、カテゴリや閲覧履歴を軸に作成するが、会員登録だけ行って購入に至らないケースもある。この場合は、登録後にMAから配信されるメールの中に簡易アンケートで注目するブランドを選んでもらい、興味関心を特定してセグメントを割り当てる。いわゆる「ゼロパーティデータ」を活用する施策だ。

加えて井上氏は、商品ページやブランドページへのアクセス履歴を基に、「買ってはいないが興味があると考えられる人」のセグメントを作成するアプローチも、一部で開始しているという。

平位氏は、メッセージ内容のパーソナライズとともに、「お客様のタイミングに合わせた」コミュニケーションの重要性を指摘する。ある施策では、メールを開封しなかった顧客に対し、日を開けて繰り返し同じ内容を自動配信したところ、3通目の開封率が高かったという。初回で行動を起こさなくても、リマインドにより意識が高まり、タイミングが合いさえすれば、顧客が反応する可能性があるという。

Web上の行動から購買意欲の高い顧客を推定

このようなEC施策で成果を上げた事例として、井上氏は「『トミカ』の閲覧トリガー施策」を紹介してくれた。トミカは2025年で発売55周年を迎えるダイキャスト製ミニカーのブランドで、常時120種類以上をラインアップ。現在では前述のとおり、大人向けの「トミカプレミアム」も人気を集めている。

井上氏によると、ファンの中にはトミカの商品を次々と閲覧する「ザッピング」行動をとる顧客がいるという。データ分析の結果、このザッピング回数が一定数を超えると、購買に至る可能性が高いことがわかった。井上氏らは、ブランドの閲覧頻度が高い顧客に自動でメールを配信する仕組みを構築し、購買意欲の喚起につなげている。

もうひとつ、井上氏は「サーチ放棄後のメール施策」を挙げた。タカラトミーモールでサイト内検索を行った顧客に対し、「こちらの商品、ご検討中ですか?ご予約期間は何月何日まで!」と、検討を後押しするメッセージを送信する。商品名を検索する顧客は、おそらくテレビCMやYouTubeなどで事前に情報を得ており、サイト訪問時点で明確な購入意欲を持っている、と井上氏は仮説立てしている。こちらも購買可能性の高い顧客に、適切なタイミングでアプローチする取り組みだ。

結果、ECサイトへの遷移率は、同社平均と比較して、前者の閲覧トリガー施策で4.5倍、後者のサーチ放棄後のメール施策で3倍に向上した。「メールからの送客は、非常に大事にしている指標。データ活用には大きな可能性があることがわかった」と井上氏は手応えを語った。Treasure Data CDPの導入によって、顧客理解に基づく多角的で深い施策ができるようになったと評価する。

なお、業務の効率化にも、CDPは効果を発揮している。「例えば、これまでは新商品が発売されると、外部の制作会社に情報を伝え、メッセージを作成していた」と井上氏。現在はいくつかのカテゴリで、商品情報と連動して自動配信を行うなど、作業量は着実に削減されている。

決済直前の離脱を抑止できれば売上を1%底上げできると試算

ここまでCRMの事例を紹介したが、井上氏はWebサイト改善の領域でも、Treasure Data CDP導入の効果を実感している。

現在、カートイン後の離脱を抑止する対策に注力しているという井上氏。「どの段階で、どんな理由で離脱したのかを、数値化して分析している」(井上氏)。

一般に、カート離脱の要因は、フォーム入力のしづらさや手続きの煩雑さ、送料無料の条件、他商品との比較検討などさまざまだ。サイト側でコントロールできない部分も多いが、UI/UXの影響が大きいと判断できれば、改善施策として取り組む価値は十分にある。

「Webのアクセスログと購買データを顧客単位で統合できるTreasure Data CDPだからこそ、離脱の要因を可視化し、次のアクションにつなげられる」と井上氏は評価する。

たとえば、買いたい商品があって会員登録はしたが購買直前に離脱した人、欲しいものをカートに入れたけど送料無料の条件に達さず離脱した人がいた場合、CDPに格納したアクセスログを辿ることで顧客行動の原因を探ることができる。

井上氏はまず、決済直前の最終確認画面で発生する離脱要因を整理し、UI/UXを改善した場合の効果を試算した。その結果、シミュレーション上はタカラトミーモール全体の売上を約1%改善できる可能性が示されたという。これほどのインパクトがあれば、優先度の高い施策として位置づけられるだろう。

人に見えない潜在需要を機械学習で可視化

井上氏は、タカラトミーが運用するTreasure Data CDPの「AutoML」にも触れた。いわゆる機械学習のプロセスを自動化する機能で、専門的な知識を持たないユーザーでも、高度なデータ分析が可能になる。

同社では、前述のように顧客に紐づく多様なデータを基に、クラスタリング分析を行った。購入する商品の傾向や、用途などの特徴を抽出し、共通点を持つ顧客グループ(クラスタ)の存在や規模を推定するプロセスだ。

井上氏らは、機械学習により「トミカの新商品が発売される度に購買する可能性の高い」クラスタを発見し、一定の需要が見込めると判断。検討している新サービスの需要をデータで裏付けることができた。

このように、これまで実施してきた分析では把握しきれていなかった潜在的なニーズを可視化し、サービスの改善や新たなマーケティング施策の立案、さらには商品開発にまで結びつけられるのが、機械学習のメリットだ。

クラスタリング以外にも、井上氏は機械学習の用途として、顧客ごとに将来の購買金額を予測する「CLTV(カスタマーライフタイムバリュー予測)」に注目する。CLTVで予測値の高い顧客のセグメントを作成すれば、CRMをさらに効率化できるだろうと期待している。「機械学習を活用することで、MAツールによる自動化施策をさらに高度化できる」(井上氏)。

一方で、「機械学習が常に、人の想定を超えるような分析を行うとは限らない」と、課題を指摘する井上氏。意味のある分析結果を得るためには、単純にデータ量が多ければよいというものではないと、井上氏は機械学習運用の難しさを語る。仮説を十分に持った上で分析で知りたい結果に適した情報に絞って、機械学習の特性やCDPにあるデータの特徴に合わせたインプットを行う必要がある。分析する担当が目的をもって行うことが大切だと考えている。

一人ひとりを見つめてより深い顧客理解へ

今後のデータ活用について、平位氏は次のように語る。

「お客様とタカラトミーの直接のつながりを増やし、深めていくのがデータ活用の目的。今はECが主戦場だが、他の分野にも範囲を広げていけるはずだ。」

井上氏が中心となり進めているように、仕組み化を図りながら成功事例を積み上げ、商品開発やマーケティング全般へと、データ活用の範囲を拡大していく方針だ。

さらに長期の展望として「おもちゃの嗜好性をデータ化したい」という平位氏。例えばシンカリオンとトランスフォーマーはいずれも「手を動かして変形するプロセス」に魅力を感じる商品。子どもの頃に「シンカリオン」に熱中した体験を持つ顧客は、大人になった時にトランスフォーマーに興味を持つのではないか。また、その顧客の影響を受けて育つ子どもには「シンカリオン」が好まれる傾向があるのではないか、と推察している。これは一例にすぎないが「顧客の嗜好性をデータ化し、潜在的な興味関心を理解して商品情報を届けることができれば、一生を通じたアソビ体験を提供できるはず」と、平位氏は希望を語る。

これに関連して、井上氏は「顧客理解の精度向上」を今後の課題として挙げる。

これまで商品軸での分析を進めているが、Treasure Data CDPに蓄積される豊富なデータを活用した顧客軸で行動を深く読み解く分析には新たなヒントを得られる可能性があると考えている。

「(平位氏が挙げた)嗜好性を可視化する取り組みでも、お客様の行動や購買プロセスを一つずつ追うことで、気づきを得られるはず。トレジャーデータにも伴走いただきながら、分析・成果創出を進めていきたい」と、引き続きの試行錯誤に意欲を示した。 

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