日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社

「今日、ケンタッキーにしない?」

顧客の潜在欲求を引き出す、日本ケンタッキー・フライド・チキンのマーケティング戦略の真髄
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ジャーニーオーケストレーション

全国に店舗を展開するケンタッキーフライドチキンの運営をサポートする日本ケンタッキー・フライド・チキン。同社では、Treasure Data CDPに顧客データを集約し、精緻に分析できる環境を構築。新規登録したアプリ会員への購買促進や、1日の計画売上を達成しそうにない店舗の売上を高めるための高度な施策を展開し、多大な成果を上げている。AI機能も活用したCRM施策の強化にも乗り出そうとしている同社は、どのようなマーケティングのあり方を追及しているのか。キーパーソンに話を聞いた。

データ統合
よりきめの細かいマーケティングの実践に向け、Treasure Data CDPに顧客データを統合
初回購買促進
ジャーニーオーケストレーションを活用したシナリオ施策で、「未購入の新規会員」の購買行動を効果的に促進
AIクーポン最適化
機械学習で店舗ごとの1日の売上を予測し、低調店の予実ギャップを埋めるクーポン施策を実施

日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
DX企画推進室
カスタマー・エクスペリエンス担当部長
平田 雄己氏

顧客データを一元的に集約して
マーケティングの質を向上

創業者カーネル・サンダースが生み出した「オリジナルチキン」のレシピを受け継ぎ、1970年に設立された日本ケンタッキー・フライド・チキン(以下、KFCJ)。同社では、顧客体験の向上とエンゲージメント強化に向け、以前より公式アプリやSNS、メールマガジンなどデジタルメディアを活用したコミュニケーションを積極的に図ってきた。 

しかし、それらのデータベースが個別に存在するうえ、IDもアプリ用やオンラインオーダー用などバラバラに発行されており、顧客の購買行動を一連の流れで把握することができずにいた。これでは一人ひとりのニーズに応じたきめ細かなマーケティング施策を講じることは難しい。

そこで、2021年度に公式アプリをリニューアルした際、用途ごとに発行されていたIDを、一人の顧客につき1つのKFC IDに統合。顧客属性、購買単価、購買数、購入エリアなどの情報を一元的に把握して分析できる環境を整備した。
この基盤として、導入されたのがTreasure Data CDPだ。その理由は、「幅広い業種・業態で多くの導入実績があること」「外部システムとのデータ連携をするためのコネクタが豊富に用意されていること」などだったという。

「データ活用の基盤が構築されたことで特定のセグメントにターゲットを絞れるようになり、Treasure Data CDPと連携したMA(マーケティングオートメーション)ツールを使うことで、これまでよりも多様なCRM施策を打てるようになりました」とKFCJの平田 雄己氏は語る。 

日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
DX企画推進室 カスタマー・エクスペリエンス担当部長
平田 雄己氏

効果を検証して内容を改善するPDCAサイクルを回すうち、次第にどのような施策が貢献売上に大きく寄与するかが見えるようになってきた。そこでトレジャーデータのサポートチームは、Treasure Data CDPの機能を機動的に用いながらCRMを段階的に加速させる「3年計画」を考案。それを受けてKFCでは施策の高度化を図るとともに、マーケティングの費用対効果をいっそう高める取り組みに着手した。

シナリオ施策の展開で
新規アプリ会員の購買を促進

3年計画において特に重視したポイントの1つが、デジタルマーケティングの高度化によるLTV(顧客生涯価値)の最大化(=来店回数の最大化)だ。折しもKFCJは、3年計画が始まった2024年度にWebサイトと公式アプリをリニューアル。アプリ会員の登録者が急増したものの、購買行動に結びつかない新規会員が多いことに課題を感じていた。

「そこで注目したのが、カスタマージャーニーに沿って定義したシナリオに基づいてメッセージを配信できるTreasure Data CDPの『ジャーニーオーケストレーション』です。この機能を活用すれば、『未購入の新規会員』をターゲットとして効果的な訴求ができると考えました」(平田氏)

初回購入を促進する「オンボーディングシナリオ」では、会員登録した日から2日後と7日後に購買促進メッセージをアプリにプッシュ配信。いずれの通知も未開封の場合はアプローチするチャネルを変え、2度目のプッシュ配信の5日後にメールマガジンを配信することとした。

ユースケース:
オンボーディングキャンペーンシナリオ

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CRM施策高度化として、ジャーニーオーケストレーションを用いて、会員登録対象者に対して、オンボーディング施策と購買2回促進を目的としたシナリオ施策を実施している

「データで初回起動から初回購入までの開封率を分析した結果、新規会員の方は登録の2日後と7日後にアクティビティが減少する傾向が高いことから、アプリで再訪のためのプッシュ配信をするのに両日が最適と判断しました。このようにエビデンスに基づいて特定のお客さまアプローチできるようになったのは、データ基盤を自在に運用できる環境が整ったおかげです」と平田氏は話す。

併せて初回購入者を対象とする「購買2回目促進シナリオ」も展開し、1回目の購入の7日後と21日後にアプリでメッセージをプッシュ配信するようにした。このシナリオでは1回目の購入時間帯から会員を「ランチ/スナックorモーニング」層と「ディナー」層に二分し、それぞれの層に適した購買促進メッセージを配信し分ける工夫もなされた。KFCの顧客は同一時間帯に購入する傾向が強く、普段と異なる時間帯に訴求しても効果が薄いと考えられたからだ。

これらのシナリオ施策は離脱の可能性があった会員を初回購入者へ転換させ、さらに2回目の購買も促すことにも効果を発揮。顧客の「ケンタッキーを食べたい」という潜在的な欲求を刺激し、施策開始からおよそ3カ月後の検証で、多大な売上貢献を果たした。「多数の施策の中でもジャーニーオーケストレーションを用いた施策の貢献が大きく、パーソナライズしたターゲットに的確なタイミングでメッセージを配信することの重要性をあらためて実感しました」と平田氏は感慨を込めて話す。

この成果を踏まえてKFCJは2回目の購入者に3回目、4回目の購入を勧めるシナリオも導入。「オンボーディングシナリオ」や「購買2回目促進シナリオ」と同様に高い売上貢献を果たすことが期待されている。

機械学習で売上予測モデルを構築し
クーポン施策で低調店の売上を底上げ

3年計画の初年度には、AutoML(自動機械学習)機能を使った売上予測モデルの構築と、それに基づいて予実ギャップを埋める販促活動も全国60数店舗で行われた。

このPoC(概念検証)ではTreasure Data CDPに蓄積されたそれまでの売上実績に、キャンペーンなど来店者数に影響する要素を加味し、AutoMLが各店舗のその日の売上を予測。計画売上を下回りそうな店舗があると、過去にその店で購入したことがある会員に来店を促すメッセージとクーポンをアプリやメールで配信した。

「予想外の悪天候など様々な要因により、お客さま出足が鈍ることがあります。そのままではAutoMLによる売上予測値に達しそうにないと判断された時点で来店を促すもので、いわばスタッフが店頭に立って道行く人に『チキンいかがですか』と声をかける『呼び込み』をオンライン化したものといえるかもしれません」(平田氏)

まだ少ない店舗数での実験段階にあるが、売上低調店の来店者数を伸ばす一定の効果が既に確認されている。この施策は今後より多数の店舗に拡大していく意向で、現在は1日単位での予実管理がなされているが、ランチタイムやディナータイムなど時間帯を細分化しての売上予測と販促活動を展開することも視野に入れているという。

AutoMLに期待されるのは売上の底上げにとどまらない。正確な売上予測ができれば、店舗スタッフのシフトの最適化や、つくり過ぎによるフードロスの削減につなげることも可能だ。

「売上を左右する多様な変数を考慮してさらに精度の高い予測ができるようになれば、実施するキャンペーンごとに想定される材料の使用量を正確に割り出し、調達を適正化するといったことも可能にします」と平田氏は期待を寄せる。

プロフェッショナルサービスチームが
マーケティング活動をきめ細かく支援

KFCJのマーケティング部門を支援するトレジャーデータのプロフェッショナルサービスチームについても、平田氏は高く評価する。マーケティングに必要なデータ基盤の整備にとどまらず、得られたデータの活用に関しても多角的な支援を惜しまないからだ。

「依頼したデータ分析を迅速・的確に行ってくれるのはもちろん、マーケティング施策についても様々なプランを積極的に提案してもらえます。特にありがたいのは、取り組みが壁にぶつかりそうになると、こちらから相談する前に先回りをするかたちでプロアクティブにアドバイスをしてくれること。これは我々の動きをしっかり見て、いつどのようなサポートが必要かを常に考えていてくれる証左だと思います」(平田氏)

こうした支援の背景には、CDP導入提案の初期段階から、KFCJが直面する課題やKPIを深くヒアリングし それに基づいて目指すべき方向性を明確に示してきたことがある。特に、Treasure Data CDPの利活用を高度化させる「3年計画」は、その象徴的な取り組みのひとつだ。KFCのマーケティング戦略を次のステージへ進めるために、消費者視点・従業員視点のビジョン・ストーリーを描きながら、データ活用の道筋を具体的に提案。この提案が採用され、実行フェーズへと移行した後も、プロフェッショナルサービスチームが伴走しながら継続的に支援を行い、確実な成果につなげている。

プロフェッショナルサービスチームによる支援範囲は非常に幅広い。ジャーニーオーケストレーションによるオンボーディング施策のシナリオプラン作成もその一つだ。

「新商品のキャンペーンに際して公式アプリでクーポンの配信などをする際には、キャンペーンを主導する広告会社や、アプリの運用を技術面で支えるベンダーなどのステークホルダーが足並みを揃える必要があり、そのための調整も率先して行ってくれました」と平田氏は振り返る。

AI機能も積極的に活用して
One to Oneマーケティングを実践する

3年計画の2年目にあたる2025年度以降、KFCJでは購買回数を軸としたシナリオのアップデートやAutoMLの活用範囲を拡充することで、CRM施策をさらに発展させようとしている。それに加えて、ネットオーダーの利用数拡大など、デジタル販売チャネルの強化にも力を入れる予定だ。ネットオーダーの普及は顧客の利便性を高めるだけではなく、会計作業から解放された店舗スタッフが調理や商品提供といった本質的な業務に専念できる環境をつくることにもつながる。

チキンはクリスマスの定番料理であることからその時期にしか利用しない顧客もいるが、KFCJが目指すのは多様なニーズを満たす商品やサービスを展開して的確なマーケティング施策を講じることで、より身近な「エブリデイブランド」となることだ。

「利用頻度の低いお客さまに来店を促すには、顧客データに対する正しい理解を積み上げ、One to Oneのマーケティングを実践することが不可欠です。そのためにはマーケティング担当者がデータ分析を依頼することなく、自らスピーディに分析することが必要なので、それを支援してくれる『Treasure Data AI Agent Foundry』を利用していきます」(平田氏)

将来的にはマーケティング部門の社員だけではなく、各店舗の店長やエリアマネージャーなども顧客データを活用する「データの民主化」も実現したいと平田氏。マーケティング部門と販売の現場では知りたいデータの解像度が違い、それに応じて打つべき施策も異なるからだ。

「マーケティングはどうしても『マス』を意識しがちで、少数の人にしか刺さらないニッチな施策はなかなか行えません。しかし理想的には一人ひとりに響く施策をお客さまの数だけ講じるべきで、それがデータ活用の究極の姿なのだろうと思っています」と平田氏。少しでもそこに近づくために、生成AIをはじめとしたTreasure Data CDPをさらに活用していく考えだ。

日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
DX企画推進室 カスタマー・エクスペリエンス担当部長
平田 雄己氏

AIが変える顧客エンゲージメント

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