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データ統合による顧客データベースのエンリッチ化

事例顧客
  • 石塚 雅延氏
    株式会社集英社
    IT戦略企画部データマーケティング室 室長

株式会社集英社は、来年で100周年を迎える老舗の総合出版社。雑誌、マンガ、文芸など、あらゆるジャンルの出版を手掛け、現在では紙媒体にとどまらず、アプリを介したマンガのデジタル配信や、ファッション・雑貨、キャラクターグッズのEコマースなど、事業の多角化を進めている。
そんななかで、同社はTreasure Data CDPによるデータ活用を推進する。一般購買データと自社の顧客データをかけ合わせた、ユニークな分析で明らかになったインサイトを、石塚雅延氏が語ってくれた。

Vポイントデータの活用
オフラインを含む一般の購買データと自社の顧客データをTreasure Data CDPでかけ合わせて分析
AIエージェントファウンドリー
AIエージェントファウンドリーを活用し、複雑なデータ分析を効率化
コレスポンデンス分析
作品ごとの読者の共通性、類似性を可視化することでインサイトを導く

Vポイントにひも付く購買データと自社の顧客データをかけ合わせる

石塚氏は、取り組みの前提として、出版業界の構造とビジネストレンドについて説明した。出版流通は、出版社から取次、書店を経由して読者に届けられるBtoB2Cの形が基本となっている。出版社は読者の傾向や反応を重視しているものの、紙の出版流通では、誰がいつ何を購入したかといった購買データを直接入手することはできない。
一方で、自社運営のECやマンガアプリは、完全なBtoCビジネスだ。「ここ数年で立ち上がった出版社の新規事業の多くはBtoCビジネス。大量の顧客データを取得できるようになり、顧客に直接アプローチできるようになった」と、石塚氏は語る。

こうした背景のもと、データの統合管理と利活用は、重要なビジネステーマとなっており、集英社でも2021年ごろから全社的なプロジェクトとして取り組んできた。Treasure Data CDPを導入し、社内に散在していたデータを統合したことで、「お客様単位で、さまざまなサービスの利用状況を把握できるようになった」(石塚氏)という。

一方で、出版社として取得できるデータには限界があることも明らかになった。読んでいる記事や本といったオンライン上の行動は把握できるものの、オフラインを含めた生活者の行動全般を、自社だけで取得することはできない。

そこで石塚氏らは、CCCMKホールディングスが企業向けに提供する「VD+」を導入した。Vポイントにひも付くオフラインの購買データと、自社の顧客データを連携することで、属性データや行動データを拡張することを狙った取り組みだ。

なお、集英社が保有する顧客データの第三者提供は、ユーザーの事前同意なく行うことはできない。この点は多くの企業と同じ状況だ。今回の取組はVD+から提供を受けたデータを、Treasure Data CDP上で自社のユーザーデータと組み合わせて活用し、集英社側の顧客データの第3者提供には当たらない形で実現している。

その結果、日用品やファッション、推し活関連の商品、さらには他社出版社の作品に至るまで、幅広い購買データを自社の顧客IDとひも付けて取得できるようになった。しかし、データの量と粒度が増したことで、集計や分析を行い、顧客理解につなげていく作業は容易ではない。そこで石塚氏は、Treasure Data CDPのAIエージェントファウンドリーを活用し、課題の解決を試みた。

個人単位で顧客の傾向が見える

データ分析を効率化するため、石塚氏はAIエージェントファウンドリーを活用し、集英社IDの分析を行うエージェントを作成した。例えば、集英社IDユーザーとV会員(Vポイントユーザー)の性別・年代別の構成比を比較するよう自然言語で指示すると、AIが即座にグラフを生成する。さらに、各年代の比率についてテキストで示唆を示し、「ビジネスインサイト」として、20代女性の比率が高いといった点を、CDPのデータベースをもとに整理して提示する。

「一般的な購買データがあるので、『(集英社IDユーザーは)コスメとの親和性が高い』といった細かな特徴も把握できる。人間がゼロから見つけようとすると相応の手間と時間がかかるが、AIで素早く当たりをつけられるのが大きい」。

(石塚氏)

AIは、集英社IDユーザーの全体的な属性を整理し、そのなかでも「ゲームへの関心が高い」「推し活に関連する消費が多い」といった傾向を示唆する。さらに、購買データを品目単位で把握することも可能で、例えばお菓子や菓子パン類では、IPとコラボレーションした商品が頻繁に購入されているといった実態も確認された。

前述した出版流通の仕組みにより、紙の出版物では顧客データを回収できないという課題があったが、この取り組みによって、その点も補えるようになった。競合作品を含め、書店で購入されている書籍や雑誌の購買データを把握できるため、どのような作品に関心を持ち、流行やブームにどの程度反応しているのかといった点から、自社の顧客の欲求や興味関心を読み取ることが可能になる。

「マンガやイラストの教本が売れていることからは、好きな作品やキャラクターのファンアートを描く行動が想像できます。また、『漫才過剰考察』(令和ロマン・髙比良くるま)や『「好き」を言語化する技術』(三宅香帆)を購入する人が多いのは、作品を深く考察し、それを表現することに関心があるからではないでしょうか。ただのマンガ好き、アニメファンという枠を超えて、顧客像を高い解像度で捉えられるようになりました」。

(石塚氏)

石塚氏が「画期的だ」と評価するのは、データを提供するCCCMKホールディングス側、そして活用する集英社側の双方において、個人単位でレポートを作成できている点だ。全体傾向を統計として把握するだけでなく、特定の属性を持つ顧客に対して、必要に応じてすぐにアクションにつなげられると、石塚氏は手応えを語る。

コンテンツと読者、消費の関係性を可視化する

続いて石塚氏は、より踏み込んだ顧客理解の手法として「コレスポンデンス分析」の事例を紹介した。分析対象同士の相対的な距離を二次元のグラフ上に表現する手法で、膨大な読者データをもとに、作品ごとの関係性を可視化するものだ。

「作品同士の距離が近いほど、読者層が共通している、あるいは似ていることを意味する。例えば自社作品をプロットすると、ダークファンタジーの『呪術廻戦』と、高校バレーボールを題材とする『ハイキュー!!』が近い位置にある、といった発見があった」。

(石塚氏)

他社作品との比較も面白い。例えば、他出版社のヤンキーが主人公のタイトルと集英社の『SPY×FAMILY』の読者層が共通していることに、「これはなかなか気づかない」と石塚氏は驚きを示す。
前者はバイオレンスなヤンキー漫画、後者は格闘シーンこそ多いものの、疑似家族のほっこりしたストーリーが軸だ。ただ、「よく考えてみると、確かに似ている部分がある」と石塚氏。ヤンキーが主人公のタイトルにおいては戦いや課題を乗り越える中で、仲間との絆を深めていく。『SPY×FAMILY』でも、疑似家族が本当の家族のように絆を深めていく過程が描かれる。まったくジャンルは違っても、抽象的なレベルでは心を震わせる要素が共通していて、そこに読者が付いているのかもしれない、といったようにスタッフ内でも考察が盛り上がった。
そして、おそらく読者自身も、このことに気づいていない。ヤンキー漫画の読者が「ほっこりした作品は自分に合わない」と、はじめから『SPY×FAMILY』を避けているかもしれない。
実は相性のよい作品に触れる機会を作れれば、読者になってもらえる可能性が高いだろう。しかも、自社の顧客であれば、直接メールを送信するなど、素早いアクションで検証することもできる。

最後に石塚氏が示したのは、作品ごとの読者の購買傾向を分析した事例だ。『ワンピース』、または『怪獣8号』を愛読する20〜30代女性の購買データを比較したところ、前者では缶ビールの購買傾向が高く、後者ではチューハイの購買が多いことが確認された。

また、美容関連の商品についても違いが見られる。前者はメイクアップ用品やスタイリング剤など、アレンジを楽しむ商品が多い一方で、後者はスキンケアなど、ケア系商品の購買に特徴がある。食品分野でも、前者は醤油やケチャップ、マヨネーズといった基礎的な調味料、後者は手軽に使える合わせ調味料やふりかけなどの商品に、特徴的な購買行動が見られた。こうした差異は、例えばIPと連動した商品企画を検討するうえで、有効な示唆を与えるデータになるという。

Treasure Data CDPを基盤とする一連の取り組みを通じて、集英社では顧客理解を深めるための分析環境を整えてきた。作品やIP単位にとどまらず、読者のライフスタイルや消費行動までを横断的に捉え、マーケティングに活用できる体制が構築されている。

こうした取り組みは、自社のマーケティングやコンテンツ活用にとどまらず、外部企業向けのデータ活用ソリューション「Shueisha Data+」にも順次反映されていく予定。広告主は、集英社が保有する多様なコンテンツと、それにひも付く顧客データ、さらに本稿で紹介したような分析基盤を通じて、精度の高い広告運用を実現できる。

Treasure Data CDP事例集:メディア業界編

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