AI導入の主な課題を乗り越えるには

AI導入の主な課題を乗り越えるには

人工知能(AI)とそのビジネスへの潜在的な影響がニュースでよく取り上げられている(※1)のは、驚くべきことではありません。AIと機械学習(ML)は、近年最も話題になっている技術といえるでしょう(※2)。これらのテクノロジーは、多くの業界に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

AIとMLは、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)にとってどのような意味を持つのでしょうか。マーケティングテクノロジーを扱う意思決定者は、CDPを活用したより高度なユースケースを検討する際に、AIとMLに大きく2つのことを期待しています。ひとつはMLによる高度なインサイトの恩恵を得ること、もうひとつはAIを活用することで、顧客データ管理に対するIT部門への依存を減らし、ファーストパーティデータの所有権を向上させることです。

これは、当社がAdvertiser Perceptionsと共同で発表した調査レポートから得られた重要な知見です。当レポートは、CDPを使用しているマーケティングテクノロジーの意思決定者100人を対象とした調査に基づいており、CDPが現在どのような価値を生み出し、意思決定者が近い将来CDPからより大きな価値を得るために、どのようなことを期待しているかを調査しています。

当レポートが示しているのは、AIとMLが重要となるタイミングです。AIとMLはCDPの導入初期にはそれほど重要ではありませんが、CDPの成熟度曲線に従って重要性が増していくことが明らかになっています。本記事では、組織がAI導入の課題に取り組み、成功を収めるためにどのように対処しうるかを探ります。

※1:参考(外部) The Impact Of AI On Businesses
※2:参考(外部) PwC 2022 AI Business Survey

AI導入に際する4つの課題とその解決法

トレジャーデータは、CDP Instituteのホワイトペーパー「AIのデータ管理:CDPの役割」を公開しました。AI導入は非常に大きなメリットをもたらす一方、その成功にいくつかの課題が存在することを当ホワイトペーパーでは指摘しています。

このホワイトペーパーによると、洗練されたAI戦略を持つ企業はわずか12%で、AIのガバナンスに自信を持っている企業は9%に過ぎません。AI戦略やガバナンスをめぐる懸念には、説明可能性、偏った結果、意図しない結果、スキルの喪失、プライバシー侵害、セキュリティリスク、将来の規制などが含まれます。

AIプロジェクトの実施と管理に関する課題のリストに着手することには身じろぎしてしまうかもしれません。しかし、これらの課題がなぜ存在するのかを正しく理解することで、それらの課題を克服するための解法を作成できるでしょう。ホワイトペーパーに詳述されているいくつかの課題をご紹介します。

データ

データの品質と精度は、AIやML技術を導入する上で最も重要な課題です。AIが学習するためには構造化された大量のデータを必要とします。信頼できないデータセットや一貫性の欠如は、結果の精度に影響を与えうる可能性があります。

データの正確性が80%以上であると回答した企業はわずか20%です(※3)。データの入手と準備に、モデル開発時間の半分以上が費やされています。その他、文脈の理解、拡張性、セキュリティ、プライバシーの問題などが潜在的な課題として挙げられています。

データの正確性が80%以上と回答している組織はわずか20%

データマネジメントの課題を克服するためには、データの品質、モニタリング、可用性に着目することが重要です。それは、AIシステムが分析しやすいように、データに属性をタグ付けすることで実現できます。システムが変更を監視し、既存のAIモデルへの影響を定期的にテストすることで、モデルの再構築や再設計が必要な場合に迅速に対応できるようにします。

また、データエンリッチメントの手法で、さまざまな外部ソースからデータを収集し、それを自社のファーストパーティの顧客データと組み合わせることで、顧客の詳細かつ正確な統合プロファイルを作成できます。リッチ化されたプロファイルは、顧客に関する新しいデータで更新を行うことができ、より意味のあるパーソナライゼーションと顧客エンゲージメントの推進に活用できるようになります。

※3:参考(外部) appen STATE OF AI and Machine Learning Report 2022

教育

AIを導入するには、従業員の仕事のやり方を根本的に変える必要があります。大きな変化を行うことは困難が伴うことに加え、さらなる課題――多くの人がAIの仕組みを理解していない、あるいは正しく機能することを信用していないこと――に直面しています。AIに対する認識(52%)とともに、63%の人は、教育やトレーニングがAI導入の障壁上位と考えているとレポートされています。教育を行えば、AIによる雇用喪失の懸念を払拭することもできるのです。

教育の実施は一部の専門家に頼るのではなく、組織全体でAIコンピテンシーを浸透させることが重要です。外部の専門家と関係を築くことで、自社のリソースを補うことができ、すべての部署で教育を広めることができるでしょう。最も重要なことは、AIは、AIプロジェクトを奨励するための認識や報酬を得て、より大きな企業文化の一部となるべきです。

AIは、AIプロジェクトを奨励するための認識や報酬を得て、より大きな企業文化の一部となるべきです

テクノロジー

十分な予算があれば、企業はAIツールを購入し、顧客データを組み入れることができます。既存インフラを現代的なシステムに刷新することは困難ですが、多くの組織がすでにデジタルトランスフォーメーションを進める過程にあり、さらにパンデミックの影響でモダナイゼーションプロセスを加速させています。

AIをサポートする技術的なインフラは、AIツール自体にとどまりません。デプロイメント、パフォーマンスフィードバック、セルフサービスも含まれます。あらゆるプロセスを通じてフィードバックを収集する、包括的な方法で構築されたAIアプリケーションを適切に展開することで、企業はAIの利点を最大限に活用することができます。

ガバナンス

最後の障害は、AIのガバナンスに関するものです。AIには独自のガバナンス問題が存在するため、他の多くのプロジェクトよりも喫緊の課題となっています。例えば、説明可能性、バイアス、未検出のエラー、意図しない結果、プライバシー、セキュリティ、コンプライアンスなどが含まれます。

これらの課題に対処するためには、AI導入のために定義されたプロセスを作成し、それに従うことが重要です。標準的な開発プロセスには、プライバシー、セキュリティ、およびコンプライアンスのレビューを必ず含めるようにすべきです。導入後は、データガバナンスに重点を置き、データの入力、モデルの精度、およびモデル出力の品質を管理しなければなりません。さらに、全社的なAIリーダーを任命し、各所のコーディネート及びあらゆる種類のガバナンスに総括的な責任を付与することが重要です。

AIがもたらす可能性のあるリスクを鑑みるに、強力なガバナンスプログラムが不可欠です

トレジャーデータはAIの障壁にいかに対処するか

AIの導入を成功させるために、企業はAIをコアビジネスの一部として扱うことが求められます。データの品質、従業員の教育、技術インフラのモダナイゼーションに注力することで、AI導入の成功に向けた準備を整えることができます。顧客データの管理に対する包括的なアプローチにより、企業はデータを最大限に活用し、AIを使用して顧客の行動に関する洞察を得ることができます。

トレジャーデータのCustomer Data Cloudを活用することで、企業は質の高い顧客データを一元的に収集し、そのデータを価値あるインサイトに結実させることを容易にします。トレジャーデータのソリューションにより、企業は社内外のソースからあらゆる種類の顧客データを統合的に収集し、新たなインサイトを発見してより良いカスタマーエクスペリエンスを促進できるでしょう。AIガバナンスへの統合的なアプローチにより、企業は収集するデータがすべての関連法規制に準拠していることを確認し、顧客のプライバシーを確実に保護し続けることができます。

AIプログラムを成功させるために、ホワイトペーパー “AIのためのデータ管理:CDPの役割” を用意しました。ダウンロードしてご確認ください。

ジム・スケフィントン
Treasure Data, Inc. テクニカルプロダクトマーケティングマネージャー

金融アナリスト、データアーキテクト、統計学者など、長年に渡りデータを扱う業務に携わってきた経験を持つ。最近では、統計学、データサイエンス、データリサーチの分野におけるソートリーダーシップが評価され、Royal Statistical Societyから表彰を受けた。また、米国海兵隊の大尉を務めていることを誇りに思っている。

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