日産自動車株式会社

日産が切り拓くデータ×AI時代の新しい顧客体験

事例顧客
  • 日産自動車株式会社
    主担 
    北原 寛樹氏
  • 日産自動車株式会社 
    日本デジタルトランスフォーメーション部 主管
    中川 香織氏
  • トレジャーデータ株式会社
    Head of Account Management
    大久保 有平

データはあるのに、意思決定や行動につながらない——。多様なチャネルから膨大な情報が取得できるようになった一方で、そのデータをもとに判断し、次の打ち手へと即座に落とし込めている企業は多くない。

日産自動車も、かつては同じ課題を抱えていた。同社はいま、全国の販売会社と顧客データを共有できる基盤として、Treasure Data CDPとCustomer Journey Orchestration(CJO)を導入し、深い顧客理解を起点に、意思決定から実行までを一気通貫でつなぐ顧客体験の設計へと踏み出している。

断片的な顧客理解の解消
部門やチャネルごとに分散していた顧客データを統合し、1人の顧客を1つの文脈で捉えられる状態を構築。施策の振り返りや次の打ち手を、データを根拠に判断できる基盤を整えた。
CJOを活用した体験設計の実装
CDPで得た顧客理解をもとに、CJOを活用した顧客体験設計に着手。点ではなく流れで顧客接点を捉え、検証と改善を回せる環境を整備した。
AI活用による内製化とスピード向上
AIエージェントの活用により、分析から施策検討までを内製で高速に回せる体制へ。ノンエンジニアでもデータを活用できる環境が整い、意思決定と実行のスピードが大きく向上している。

「データはあるのに顧客が見えない」断片的な顧客理解の限界

日産自動車におけるデータを活用した「顧客理解×顧客体験設計」の取り組みは、ここ数年で始まったものではない。同社は2000年代以降、データベースマーケティングに注力し、顧客との関係づくりを意識したコミュニケーションを続けてきた。

車両プレゼントをフックにしたオンラインキャンペーンなどを通じて、新規顧客との接点を広げ、取得したデータをもとにナーチャリングを行う。その結果、メールやCRMを通じて得られる情報に加え、全国の販売会社が保有する情報など、顧客に関するデータは長年にわたり蓄積されてきた。こうした取り組みが定着した結果、データ活用は同社のマーケティングにおける強みの1つへと育っていった。

しかし、データが増加するほど、課題も浮かび上がってきた。

「メールの配信量が増えるにつれて、開封率やクリック率といった反応は落ちていきました。それにもかかわらずコストは増え、施策全体としてROIが見合わなくなっていたのです。従来のやり方では成果を出しにくくなっていました」と、日産自動車の中川香織氏は振り返る。

その背景にあったのが、「断片的な顧客理解」だった。メール施策単体で見れば、開封率やクリック率といった反応は把握できる。しかし、メールを見た顧客がその後どのように検討を進め、最終的に購入に至ったのか、あるいはなぜ離脱したのかまでを一貫して捉えることは難しかった。顧客の購買行動に関するデータが分散して管理され、分析のたびに個別にデータを引き出し、突き合わせる必要があったためだ。

顧客の状況を立体的に捉えられなければ、その人に適したサービスは何か、次にどんな施策を打つべきか、を判断することも難しい。この状態が、適切な意思決定と行動の壁になっていました

(中川氏)
図:日産自動車では、顧客に関するデータが部門やシステムごとに分散して管理され、顧客の行動や状況を横断して捉えることが難しく、顧客理解が断片的になっていた。

CDP導入で、顧客ごとの行動や反応が一画面で確認できるように

「断片的な顧客理解」からの脱却を目指し、日産自動車が選択したのがTreasure Data CDPの導入だった。メールやWeb、店頭など、各種接点で得られる顧客データをCDPに集約し、顧客単位で管理・可視化することで、これまで個別に追っていた顧客行動を、同じ文脈の中で捉えられる環境を整えていった。

こうして顧客行動をまとめて把握できるようになったことで、施策の実行スピードにも変化が生まれた。顧客ごとの行動や反応を1つの画面で確認できるようになり、データを個別に取り出して突き合わせる手間が不要になったことで、施策の実行から振り返り、次のアクションの検討までを一連の流れとして回せるようになってきている。

さらに、この変化は現場にも浸透している。日産自動車の北原寛樹氏は、CDP導入を通じて「データの民主化」が進んだ点を挙げる。

これまでは多くのデータを持ちながらも、それをどう活用すればいいのか分からない状態が続いていました。そこで協力会社の支援を受けながら、どんなデータがあり、誰が活用できるのかを整理した『データカタログ』を整備しました。その結果、目的に応じて使うべきデータを、判断しやすくなったのです

(北原氏)

データの所在や用途が整理されたことで、エンジニアでなくても状況を把握しやすくなり、仮説を立てるまでのハードルも下がった。顧客データの確認や分析にかかっていた手間が減ったことで、現場では施策の中身や次の打ち手の検討そのものに、より多くの時間を割けるようになっている。

データ統合の先で顧客にどのような体験を届けるか

CDPによって顧客データの統合が進み、日産自動車が次に向き合ったのは、得られた顧客理解をどのように顧客接点へ落とし込み、体験全体として形にしていくかという点だった。

つまり、データを統合すること自体が目的ではなく、その先でどのような体験を顧客に届けるのか。顧客体験の設計そのものが、より重要なテーマとして浮かび上がってきた。

当時、顧客体験の設計において抱えていた課題は大きく2つあった。1つは、複数のチャネルで施策を展開していながら、それらを顧客の検討プロセス全体として最適化できていなかったこと。もう1つは、その結果として、顧客の状況やニーズに即した一貫した体験を提供しきれていなかった点である。

こうした課題に向き合う中で、2025年9月に導入されたのが、トレジャーデータのCustomer Journey Orchestration(CJO)だった。CDPで統合した顧客データを前提に、顧客の検討段階や行動に応じて、どのチャネルで、どのような働きかけを行うかを設計・実行する。顧客体験を「点」ではなく「流れ」として捉えるための仕組みだ。
いる。

北原氏は、自動車ならではの検討プロセスの特性について次のように話す。

自動車は検討期間が長く、オンラインで情報収集し、店舗で試乗し、いったん持ち帰って家族と相談するなど、『情報収集』と『検討』を行き来しながら意思決定が進む商材です。オンラインとオフラインを分断せず、検討の流れに沿ったコミュニケーションを設計できるかどうかが、顧客体験の質を大きく左右すると考えていました

(北原氏)

その第1弾として取り組んだのが、ミニバンクラス「セレナ」を対象とした施策である。

図:セレナ検討ユーザーを対象に、CJOを活用し、顧客の検討行動に応じたコミュニケーションを設計・検証しているカスタマージャーニーの一例。

見積もり依頼やカタログ請求、来店予約の応募フォームにアクセスいただいた後、来店に至っていないケースが一定数存在していた。そこに機会損失が生じているのではないかという仮説を立て、一定期間を置いてからメールでフォローする施策を実施した。

この施策では、最初から完成度の高いジャーニーを作り込むのではなく、シンプルなフローを複数用意し、A/Bテストを通じて改善を重ねた点が特徴だ。

従来のMA(マーケティングオートメーション)ツールでは、開発コストの高さから、1本の完成されたジャーニーを重厚に作り込んでしまうケースが少なくなかった。ただその場合、どこで顧客が離脱したのかが見えにくく、うまく機能しなければ、成果につながらないフローが動き続けてしまうこともある。その点、シンプルなフローを複数用意し、反応を見ながら改善していくアプローチは、顧客理解を深めるうえでも、施策を磨いていくうえでも有効だった。

顧客の反応を確認しながら分岐を調整し、体験を磨いていく。顧客理解を起点に、設計し、動かし、検証するサイクルが、CJOを通じて現場で回り始めたのだ。

AI活用で進化する「分析・企画・設計・実行・検証」

こうした取り組みの先に、日産自動車が見据えるのが、AIを活用した顧客体験のさらなる進化だ。中川氏は、「オンラインとオフラインを分断せず、顧客の検討プロセスに沿って一貫した体験を提供する世界を目指している」と語る。

図:オンラインとオフラインの顧客データを統合し、検討から購買、アフターまで一貫した顧客体験を設計する日産自動車の構想。AIを活用し、顧客の状況に応じた最適な提案を実現することを目指している。

自動車購入では、多くの顧客は事前にオンラインで情報を集め、購入意欲を高めた上で店舗を訪れる。だからこそ、オンライン上で得られた興味・関心や検討状況を踏まえて、来店時の対応へつなげられるかどうかが重要になる。オンラインで期待が高まっていたにもかかわらず、店舗でまったく異なる提案を受けてしまえば、体験はそこで分断され、顧客の熱量も冷めてしまうからだ。

こうしたギャップをなくすため、日産自動車ではAIを活用し、顧客の嗜好や関心、検討状況に応じた情報提供の高度化を進めていく考えだ。単に情報配信を自動化するのではなく、「いま顧客はどの段階にいて、何を求めているのか」を理解した上で、最適なコミュニケーションを行う。その前提として、これまで整えてきたCDPやCJOによる顧客理解と体験設計がある。

さらにAIの活用は、顧客向けの体験提供だけにとどまらない。日産自動車では、CJOと同時に「AIエージェントファウンドリー」を導入し、施策の振り返りから次の打ち手検討までを、より短いサイクルで回せる環境づくりに着手している。

施策を実行したあとの反応や結果を自然言語で確認し、そこから得られる示唆を基に次の打ち手を検討できるようになりました。そうした壁打ちをAIと行えるようになったことで、分析から施策立案までのリードタイムが大幅に短縮されていると実感しています

(北原氏)

AIが分析や示唆出しを担うことで、「分析・企画・設計・実行・検証」という一連のマーケティングプロセスを、より滑らかに回せるようになってきた。これまで外部に依存していた分析や検証を内製で進められるようになり、意思決定のスピードも着実に高まりつつある。

顧客理解を深め、体験として実装し、得られた学びを次に生かす。CDP、CJO、そしてAIを組み合わせた取り組みは、顧客体験の質を高めるだけでなく、日産自動車のマーケティング全体を進化させようとしている。

自動車業界向け CDPユースケース

モビリティ・自動車業界のCDP活用事例を、今すぐダウンロード

Treasure Data CDP事例集
モビリティ・自動車業界編

導入の背景から、活用後の変化までを公開

おすすめ

View All

マーケティングテクノロジー投資を最適化するためのポイント

「そのMA、本当に顧客を『動かせ』ていますか?」AIが変える顧客エンゲージメント ~次世代MA Engage Studioとは~

arrow

DX・マーケティング知恵袋

ファーストパーティを活用したデジタルマーケティングの新手法

arrow

DX・マーケティング知恵袋

「CDPの乗り換えは大変」という常識を覆す。スムーズな移行を支援する強力なソリューション

arrow
ホーム > 導入事例集 > 日産が切り拓くデータ×AI時代の新しい顧客体験