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AI時代に、顧客の“なぜ”を理解し顧客中心主義経営を達成するには

事例顧客
  • 株式会社NTTデータ
    テクノロジーコンサルティング事業本部 テクノロジーコンサルティング事業部
    栗原 裕一氏
  • クアルトリクス合同会社
    パートナーアライアンス & プロフェッショナルサービス / VP
    戸田 大介氏

顧客データを保有しながらも、それを十分な「顧客理解」につなげられず、CX(顧客経験価値)改善につなげられていない企業は少なくない。

こうした状況の中、顧客の行動を示す「行動データ」と、体験や感情を捉える「体験データ」を組み合わせ、顧客理解を捉え直そうとする動きが広がっている。体験データを扱うクアルトリクスによる、顧客データ基盤を担うトレジャーデータとの連携は、その代表的なアプローチの一つだ。

体験データと行動データの掛け合わせによる、実践的なCXの高め方を提示してきたクアルトリクスの戸田氏と、CXマネジメントの設計を支援するNTTデータの栗原氏。両氏へのインタビューから、AI時代に求められるCXマネジメントのあり方を探っていく。

行動データ×体験データによる顧客理解
行動データに体験・感情データを重ね合わせることで、「何が起きたか」だけでなく「なぜそうなったのか」まで踏み込んだ顧客理解を実現。
CX改善を継続させるマネジメント
組織・データ・人とシステムの壁を乗り越え、改善を循環させるCXマネジメントを設計。顧客理解を現場判断と経営判断の両方につなげる仕組みを明確化。
スモールスタートなAI活用
分析やデータ連携といった業務負荷の高い領域にAIを組み込み、CX改善のスピードを高めながら、現場で無理なく運用できる体制を構築。

「顧客中心主義経営」が達成できない理由

近年、CDPを導入し、顧客データを活用した取り組みを進める企業が増えている。その背景にあるのは、企業経営の中核に顧客理解を据える意識の高まりだ。

この「顧客中心主義経営」の実践は、企業の競争力に劇的な差をもたらす。フォレスターリサーチの調査によれば、実践企業はそうでない企業に比べ、収益成長率は41%、利益成長率は49%、顧客維持率は51%も高いという。だた、こうした経営を実現できている企業は全体の約3%に過ぎないのが現状だ。

では、なぜ多くの企業は、顧客理解の重要性を認識しながらも、それを達成できていないのか。 戸田氏は、その要因の一つとして、企業が「業務(オペレーショナル)データ」偏重のアプローチに陥っている点を挙げる。

業務データとは、ECサイトの閲覧履歴やPV数、購入金額など、企業活動の中で自然に蓄積される「事実」のデータを指す。CRMやWebトラッキングで管理されるこれらは、顧客の状態を知るうえで不可欠な要素だ。しかし戸田氏は、「業務データだけに依存した顧客理解には限界がある」と警鐘を鳴らす。

「業務データから分かるのはあくまで『起きた行動』であり、顧客が『なぜその行動を取ったのか』という理由や感情までは捉えにくいからです。この『なぜ』が分からなければ、顧客を深く理解し、より良い商品・サービスの提供につなげることは難しいのです」

(戸田氏)

その限界を象徴する例として、グローバルに展開するアパレル企業のケースを紹介した。その会社では、ECサイトの閲覧回数やカート投入数が多く、購入頻度・購入単価ともに高い顧客をロイヤル顧客と定義し、レコメンド配信やクーポン配布、リマインド通知といった施策を集中的に実施していた。その結果、短期的には売上が伸びたものの、中長期的には全体の収益が次第に低下していったという。

図:顧客体験を考えないアプローチにより、ロイヤル顧客が離れてしまうケースもある。

原因を探るためにカスタマーリサーチを行ったところ、「頻繁な通知や売り込みによって、ブランドが安っぽく感じられるようになった」という声が寄せられた。商品そのものの品質は変わっていないにもかかわらず、体験の印象が変化したことで、ロイヤル顧客が静かに離れていったのである。

「何を見たのか、何を買ったのか、どれくらい使っているのか。そうした行動を見ることはもちろん大事ですが、それだけでは『なぜ』までは見えてきません。人の感情や体験まで含めて捉えてこそ、顧客を360度で理解できるようになります」

(戸田氏)

こうした課題意識から、クアルトリクスでは顧客の「体験」や「感情」に目を向ける考え方として、「体験データ(エクスペリエンスデータ)」という概念を提唱している。アンケートによる満足度評価や自由記述コメント、レビューなど、顧客の体験や感情を直接捉えるデータがそれにあたる。

図:業務データをTreasure Data CDPに集約し、クアルトリクスで収集した体験データを結びつけることで、顧客行動の背景まで踏み込んだ改善が可能になる。

体験データの活用例として紹介されたのが、外資系ファーストフードチェーンの取り組みだ。同社では、EC予約後のアンケートや店頭レシートのQRコード、デリバリー利用後の評価、レビュー投稿など、さまざまな顧客接点で得られる体験データを継続的に収集している。

これらの体験データは、クアルトリクスで収集・可視化され、Treasure Data CDPに統合された業務データと紐づけて管理されている。これにより、「誰が・いつ・どこで・何を・どのくらい利用したのか」という行動データに、「なぜそうしたのか」という背景を重ねて捉えることが可能になった。

その結果、南アフリカの店舗では、特定の時間帯にオーダーミスが集中していることが可視化され、迅速な現場改善につながった。フランスの店舗でも、店舗に対する顧客からのフィードバックをリアルタイムに改善を重ね、Googleマップのレビューで高い評価を獲得している。

顧客が「何をしたか」だけでなく、「なぜそうしたのか/感じたのか」に目を向けること。顧客の「なぜ」を起点に顧客理解を捉え直す姿勢が、顧客中心主義経営に近づくための第一歩であることが見えてくる。

顧客中心主義経営を実現するCXマネジメント

業務データと体験データを組み合わせることで、顧客理解は確かに深まる。ただし、顧客の「なぜ」を理解できたとしても、それを継続的な改善につなげられなければ、顧客中心主義経営の実現には至らない。

顧客の声や体験から得られた示唆を、どのように経営や現場の判断につなげ、改善のサイクルとして回し続けていくのか。その設計思想を「CXマネジメント」の観点から語ったのが、NTTデータの栗原氏である。

栗原氏は、CXの改善が思うように進まない背景には、大きく3つの壁があると説明する。

1つ目は、「組織活動の壁」だ。部門ごとにカスタマージャーニーが設計され、顧客に対する共通認識が揃わないまま施策が進むことで、顧客体験が分断され、一貫性のあるCXを提供できない。

2つ目は、「データの壁」である。理想とする顧客体験が描かれていても、その達成状況が可視化されなければ、施策の評価は難しい。顧客の状態や変化を部門横断で把握できず、体験の良し悪しを判断できないケースも少なくない。

3つ目が、「人とシステムの壁」だ。CX向上につながるテクノロジーを十分に活用できていない、あるいは複数のツールを導入しているものの、現場の業務や成果につながっている実感が持てない状態である。

これら3つの壁が存在することで、CXの取り組みは構造的に前に進みにくくなり、改善を継続的なサイクルとして回すことが難しくなる。こうした課題を乗り越えるために重要になるのが、「CXマネジメント」の設計だ。

CXマネジメントとは、収集した顧客データをリアルタイムで分析し、現場での即時対応と組織全体の改善の双方につなげていく取り組みである。業務データと体験データを掛け合わせることで顧客ニーズを顕在化させ、短期の顧客対応を担うインナーループと、中長期の組織改善につなげるアウターループを継続的に循環させていく。

一方で栗原氏は、「CXマネジメントを導入するだけでは十分ではない」と言及する。CXの構想が描かれないままでは個々のCX改善にとどまり、結果として継続的なCXの強化につながらないケースも少なくない。

「だからこそ、CXの構想をきちんと描いたうえで、それを支えるプラットフォームや分析の仕組みを整えていくことが重要です。そうした準備があってはじめて、データドリブンなCX継続改善の循環型サイクルを実現できるのです」

(栗原氏)
図:CX構想、プラットフォーム、CXマネジメントを組み合わせることで実現する、データドリブンなCX継続改善の循環型モデル。

AI活用でCXマネジメントをどう強化するか

CXマネジメントの考え方が整理された上で、次に多くの企業が関心を寄せるのが、AIをどのように掛け合わせていくのかという点だ。AIの進化によって、CXの強化に新たな可能性が開かれつつある一方で、単にAIを導入すれば、CXが向上するわけではない。

重要なのは、CXマネジメントのどのプロセスに、どのような役割でAIを組み込むのかという設計である。栗原氏は、CXマネジメントにおけるAI活用について、スモールスタートでの導入が現実的だと語る。

図:業務データと体験データを統合したCXマネジメントの循環に、AIを組み込むことで、
現場の即時対応(インナーループ)と組織全体の改善(アウターループ)を継続的に回していく。

実際の現場では、顧客の声や体験データからインサイトを抽出するプロセスを自動化したり、分析業務の負荷を軽減したりといった、機能単位でAIを活用していく取り組みが進んでいる。こうした活用は、CX改善のスピードを高めると同時に、現場での運用負荷を抑える効果も期待できる。

さらに、業務データと体験データを掛け合わせる際、データ統合やAPI連携に時間がかかる場面では、AIをアダプターのように用いることで、開発を効率化・高速化することも可能になる。CXマネジメントにおけるAI活用は、こうした循環を支え、加速させるための存在として位置づけられている。

「NTTデータでは今後、CXマネジメントにとどまらず、EX(従業員体験)マネジメントを含めたエンゲージメントの強化や、セールス、マーケティング、コールセンターといった領域にも、AIエージェントを中核として展開していきたいと考えています。顧客接点全体を見据えたカスタマーエンゲージメントセンターの実現も、その先にある構想です」

(栗原氏)

一方で戸田氏は、AI活用が進むからこそ、改めて顧客体験の本質に立ち返る必要があると指摘する。

「どれだけAIエージェントが高度化しても、向き合うお客様は人間であり、体験に伴う感情の存在は無視できません。だからこそ、エージェントによる対応も含めたお客様体験を測定し、改善していくループは欠かせません。こうした取り組みを、企業活動の中に顧客中心として組み込んでいくことが重要だと思っています」

(戸田氏)

AIが担う対応や判断そのものも、顧客体験の一部となる。AX(エージェントエクスペリエンス)をCXの延長線上で捉え、その体験に伴う感情を測定・分析し、改善につなげていくことが、AI時代のCXマネジメントには求められている。

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