顧客データ管理を正しく理解するために

主なデータ活用ツールとの比較

顧客データ管理の概念と重要性、そして活用方法

顧客データは、企業がマーケティングや販売活動を最適化するために利用できる、最も価値のあるデータです。顧客が製品を購入するまでにWebサイトを閲覧した時間といった「行動データ」や、顧客の性別・年齢・役職などの「属性データ」は、顧客とより密接に関わり、すべての顧客にパーソナライズされた体験を提供するのに役立ちます。

顧客の行動や属性を利用してコミュニケーションを推進することは、営業・販売、マーケティングを成功させるための鍵となります。パーソナライゼーションが「そうできたら便利だ」という程度にしか考えられていなかった時代は、すでに終わりを迎えています。マッキンゼーの調査によると、米国在住の成人回答者の80%が「小売企業からのアプローチはパーソナライズされていてほしい」という結果が紹介されています。パーソナライゼーションはもはやビジネス上の必要条件です。

加えて、この調査では、パーソナライゼーション・プログラムを大規模に展開することで、営業・販売やマーケティング活動のコストを10~20%削減できることも指摘されています。大規模なパーソナライゼーションによって、あらゆる規模の企業が、顧客の心に響く方法でアプローチを取ることが必要であると説いています。

顧客データは、パーソナライゼーションに役立つだけでなく、類似の顧客を見つけ出すこともできます。理想の顧客がどのように考え、行動するかを理解することは、マーケティングや営業活動で顧客にアプローチするために不可欠です。

顧客データを収集、統合、分析することで、企業は顧客にアプローチする方法を推測するのではなく、正確に理解することができるようになります。

顧客データ管理とは?

顧客データ管理(カスタマーデータマネジメント)は、企業が顧客データを管理するために用いる戦略、ツール、プロセス、および標準化を包括する概念です。顧客データ管理には、データの収集、保管、整理、そして利活用も含まれます。

顧客データを詳細かつ示唆に富む顧客プロファイルに変換し、企業の営業部門やマーケティング部門が顧客とのコミュニケーションの改善に利用できることを目的とします。顧客データ管理によって、企業は顧客のニーズをより正しく理解し、顧客エンゲージメント向上、さらには顧客維持につながるコミュニケーションを実現できるのです。

また、倫理的なデータの運用と保護が求められます。顧客データ管理プロセスには、営業やマーケティングとい組織の枠を超え、法務およびITチームとの連携が求められます。企業内での協力体制が前提となり、企業の顧客データ管理への取り組みと関連技術の利用が公正で、必要な規制やガイドラインに準拠したものでなくてはなりません。

  • 顧客データ品質を保ちます頻繁にメンテナンスされ、分析、レビューされている品質の高いデータは、優れたインサイトを企業に供給します。
  • より良い意思決定を行います適切なオーディエンスにターゲティングするには、推定情報を用いずに実際の顧客データを活用するのが有効です。クリック課金型広告(PPC広告)、ソーシャルメディアへの投稿(オーガニック、有料)、Eメールマーケティングといった施策の効果を高めることができます。
  • 顧客データを一元的に格納します顧客データを管理することで、営業とマーケティングなど、異なるチームであっても一貫性のある正確な顧客プロファイルを参照することができます。組織内でデータが重複するリスクも軽減されます。
  • コンプライアンスを遵守します顧客の居住地域によっては、顧客データの収集・管理方法に関して求められるビジネス要件が存在する場合があります。法規制やガイドラインを遵守することで、高額なペナルティを支払うリスクを回避します。
  • 拡張性を担保しますビジネスが成長にともない、手作業を最小限に抑えた再現性のあるプロセスが必要です。顧客データ管理に適切なツールを採用することで、顧客データ管理に必要な多くの業務は自動化され、チームは他の業務に注力することができます。

顧客データ管理を行うことで、企業は顧客に、One-to-Oneの体験を提供できるようになります。顧客データをインテリジェントに活用することで、顧客にとって適切なタイミングで適切なメッセージを自動的に届けることができるのです。

小売企業を例にとります。ECサイトでショッピングカートに商品を入れたものの、購入せずにWebサイトを離れた顧客には、Eメールで割引サービスの提案を送ることができます。お客様は購入に向けて背中を押され、ビジネスに売上増加が期待されます。

顧客データ管理に最適な技術とは?

顧客データ管理を行うにあたり主要なツールとされているのが、CDP(カスタマーデータプラットフォーム、顧客データ基盤)です。CDPは、顧客データ管理のハブとして機能し、多種多様なデータソースに接続し、収集したデータをリアルタイムで顧客プロファイルとして統合させます。このデータは、個人に関する情報から、顧客の行動に関する情報まで、多岐に渡ります。高機能のCDPでは、顧客データ管理用のダッシュボードなどの機能を備えており、顧客とのコミュニケーションをリアルタイムに管理、分析することができる製品もあります。

CDPは、ファーストパーティデータ(自社で保有する、顧客から企業へ直接送信されるデータ)とサードパーティデータ(第三者から企業へ届くデータ)を格納し、表示します。ファーストパーティデータは、顧客が企業に対してデータの利用と保持に同意したデータであることから、企業にとっては非常に重要なデータであるといえます。

CDPを利用するのは主に営業部門やマーケティング部門、コンタクトセンターなど顧客接点を持つ部門です。それらの部門で実施するプログラムやキャンペーンにおいて、多く活用されますが、CDPが提供する顧客に関するデータは、社内の他の部門も含め全社で利用することが可能です。

CDPは、DMP(データマネジメントプラットフォーム)と混同されることがあります。しかし、CDPとDMPには明確な違いがあります。DMPも顧客データを収集・表示しますが、扱うデータは匿名であり、データ保持期間は数十日です(CDPのデータ保持期間は長期もしくは永続的です)。一般的に、DMPが保管するデータはサードパーティデータもしくはパートナー企業などから収集したデータ(セカンドパーティーデータ)です。

企業内で多様なユースケースが想定されるCDPと異なり、DMPは特に広告やリターゲティングのために使用されます。また、DMPはCDPのデータソースの一つとして利用されることもあります。

CRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)との違いについても触れます。CRMは、顧客データを収集・格納しますが、目的がCDPやDMPとは異なります。CRMは、主に営業部門が顧客とのやり取りや過去の購入履歴、アップセルの機会などを見つけるために使用されます。また、CRMに格納されるデータを用いて、マーケティングキャンペーンの効果測定、販売分析、収益予測などを行うこともできます。

より大規模な顧客データ管理戦略を目指す企業では、3つのマーケティングテクノロジー全てを採用することもあります。

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顧客データ基盤と顧客マスターデータ管理の比較

顧客データ管理の文脈で、顧客データ基盤(CDP)と顧客マスターデータ管理(MDM)を比較することがよくあります。CDPはソフトウェアのツールであり、MDMは「規律」であるため、全く異なるものを比較していると言ってもよいでしょう。

MDMは、信頼できる単一のソースとして機能する、データのマスターレコードを持つことを志向し、データのガバナンスと組織化に主眼を置いています。顧客データの管理(およびCDPなどのツール)はMDMの規律のもとに存在します。

「顧客データ管理」という用語が、MDMの構成要素の一部分を説明するために使われることもあります。顧客マスターデータ管理は、顧客データ管理に似ていますが、範囲がより限定されています。顧客マスターデータ管理は集計されたデータによる顧客マスターレコードの作成と管理を指しますが、顧客データ管理のような戦略に焦点を当てたものは含まれません。

顧客データ管理のプロセスは、MDMのプロセス全体と非常によく似ています。CRMやERPなど、複数のソースやシステムからデータを集め、データに顧客識別子を付与して、レコードを顧客ごとにグループ化します。さらに、社内外の複数のデータソースからレコードを取り込み、データを組み合わせて統合的なビューにまとめます。重複するデータを削除し、単一のソースを作成することも、顧客マスターデータ管理に含まれます。

顧客マスターデータ管理の対象とするデータは、営業、カスタマーサービスやコンタクトセンター 、マーケティング、財務、法務などの部門に特に役立ちます。顧客データ管理システムとともに使用する別のツールが用いられ、CDP、CRM、DMPといったツールと重なるものではありません。

顧客データ管理戦略において対象となるデータの種類

企業は分析し意思決定を行うために、顧客データ管理において数種類のデータを保持します。利用可能な顧客情報をすべて取得したいところですが、データが多すぎると、そこからインサイトを導き出すことが困難になります。

利用可能なデータを理解することから始めましょう。次に、短期的および長期的なビジネス目標に対して、どのデータが最も効果的であるかを判断します。

個人を特定可能な情報

考慮すべきデータとしては、個人を特定可能な情報です。通常、顧客は製品の購入時にこのデータを提供しますが、Webサイトのフォーム送信によってデータが収集されることもできます。個人を特定できる情報の一例は以下のとおりです。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 電話番号
  • Eメールアドレス
  • 住所

属性データ

属性データとは、お客様の特性を表すデータです。企業は、調査、インタビュー、フォーカスグループなど、いくつかの方法を用いて、顧客から収集します。収集するデータには、以下のようなものがあります。

  • 職種
  • 年収
  • 学歴
  • 配偶者の有無
  • 子どもの数
  • 保有する車の種類

行動データ

行動データは、顧客が企業とどのようなやり取りをしたかを示します。CDPを使用している場合、これらの詳細をリアルタイムでプラットフォームに取り込むことができます。また、顧客との直接的なやり取りから得られることもあります。行動データの例は次の通りです。

  • Webサイト訪問
  • Webサイトのフォーム入力
  • Eメールの開封またはクリック
  • クリックスルー率
  • 購入した製品と購入金額
  • ショッピングカートに残っている商品
  • 返品件数
  • カスタマーサポートのログ

これらすべてを追跡する必要はありません。例えば、Eメールのナーチャリング キャンペーンで、より多くのMQL(Marketing Qualified Lead)を営業チームに提供するというマーケティング目標がある場合は、より行動データと属性データに焦点を当てる必要があるでしょう。

行動データからは、EメールやEメール上のコンテンツに顧客がどのような行動を行っているかを知ることができ、属性データからは、すでに顧客の共通の特徴を知ることができます。共通の特徴を持つ新規顧客を獲得するために新たなターゲティングキャンペーンを行ったり、ターゲット顧客に直接コミュニケーションを取るためのパーソナライゼーションの取り組みに力を入れることができます。

顧客データ管理のベストプラクティス

顧客データ管理のベストプラクティスを実践することで、データをより効果的に活用することができます。それにより顧客は、その企業がプライバシーを尊重し、世界、地域、国で定された規制を遵守してデータを取り扱っていると感じるでしょう。もし顧客が企業に預けた自らのプライバシーが保護されておらず、倫理的に使用されていないと感じれば、その企業にデータを提供し続けることはありません。

企業は顧客からの信頼を得るのは簡単ではありません。SASとFuturum Researchのレポートによると、「ブランドがデータのプライバシーを保護してくれており信頼している」と答えた消費者は54%に過ぎません。同じレポートでは、73%の消費者が、「ブランドが自分のデータをどのように使用するかについて懸念を抱いている」ことも明らかにされています。

ベストプラクティスを作成し伝達することで、顧客との必須の信頼関係を確立しやすくなります。これにより、顧客は自らのデータを安心して共有できるようになります。 顧客データ管理のベストプラクティスを5つご紹介します。

#1. 顧客データ管理戦略を策定します。戦略なく顧客データ管理のプロセスや技術を導入した場合、取り組みが散漫になり、成果が創出できない可能性があります。これは、責任、ガイドライン、目標がない場合において起こります。明文化された戦略が答えるべき質問はこのようなものです。

  • 顧客データ管理プロセスを管理する責任者は誰ですか?
  • 顧客プロファイルを作成するために、どのデータソースを使用しますか?
  • データはどこに保持されますか?
  • データを一箇所に保存するのか(例:CDPなど)?
  • データガバナンス:データはどのように標準化および検証されますか? そのプロセスの実施を確認するのは誰ですか?
  • 顧客データ管理の実践が欧州連合の一般データ保護規則(GDPR)、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)および関連規制に準拠することを保証するために、どのような手順が取られますか?

#2. 関係部門のトレーニングを行います。戦略を機能させるためには、メンバーが顧客データの取り扱い方を理解していなくてはなりません。顧客データにアクセスできるメンバーが戦略を理解し、顧客データの適切な扱い方を知っているかを確認します。このトレーニングは、IT、法務、マーケティングなど各部門が協力しながら実施される必要があります。

#3. トラッキング対象を具体的に指定します。どのようなデータをトラッキングするかを早期に決定し、その目標に向けてデータソースを最適化します。開始時に設定したデータの有効性に基づいて、顧客データ管理のプロファイルは将来に渡って更新することができます。

#4. 取り組みを自動化する技術を導入します。顧客データ管理は手動プロセスで埋め尽くされることもありますが、それではメンバーの作業が増えてしまいます。データ統合、プロファイル作成、データ分析などの作業を自動化できるテクノロジーツールを導入しましょう。

#5. カスタマージャーニーを改善します。顧客プロファイルを用いてキャンペーンを有効に作用させ、顧客にパーソナライズされた体験を提供します。統合された顧客データを、Eメール、広告、Webサイトなどでのコミュニケーションに活用しましょう。

技術スタックを統合してパフォーマンスの最大化を実現

顧客データを管理は顧客データを収集することから始まります。まず、あらゆるデータソースに接続する必要があります。適切な技術を使用し、異なるシステム間での互換性を見極めましょう。

CompTIAが行った「データ管理の動向」と題する2020年の調査では、IT専門家の37%がデータ統合を最重要課題として挙げていることが明らかになりました。調査によると、この課題を解決するには適切なストレージソリューションとワークフローが必要です。「企業がデータを適切に管理するためには、インフラストラクチャ、スキル、ポリシー全体に渡って解決しなければならない様々な問題があります」とこの調査は指摘しています。

顧客データ管理戦略の一環としてCDPを導入することで、システム、チャネル、部門におけるデータの分断を解消し、複数の顧客データソースをまとめることができます。CDPは、データ統合を行うためのコネクターを持ち、SDK、Webhook、APIを提供します。

データを収集するには複数の選択肢がありますが、多様なデータを顧客データ管理のための仕組みに取り込むことができます。モバイルアプリやWebサイトのログ、CRM、ERP、DMP、MA(マーケティングオートメーション)などからのデータを追加して、顧客プロファイルを充実させることができます。

データのオーバーロードを避ける

顧客プロファイルに統合するデータを目的に沿って選択することは重要です。しかしそれだけではデータのオーバーロードや、意思決定に役立たない、あるいは解釈しにくいデータの乱立を避けることはできません。

チームが効果的に顧客データを分析できるように、顧客データの品質管理に関するいくつかのステップをご紹介します。

  • データを常に整理整頓された状態に保ちましょう。データの品質チェックを定期的に実行し、データが整理されていること、正しく分類されていること、最新であることを確認します。この確認は、顧客データ管理ツールにおける定期的なメンテナンスサイクルの一部として行うこともできますし、CDP上で自動的に更新されない重要なデータに対して、より頻度高くメンテナンスを行うこともできます。
  • 顧客データを検証しましょう。データソースに求める正しいデータがあることを確認します。そうでない場合は、データプラットフォームとCDPを連携し、データを正しく修正する必要があります。
  • 重複したデータに注意しましょう。同じデータが同じソースまたは複数のソースから複数回取り込まれている場合、重複したデータがないかを確認しましょう。

企業の顧客データ管理戦略にこれらのステップを組み込み、データとシステムのメンテナンスを定期的に行うことで、正確なインサイトを得られない不要なデータを抱え込む可能性を減らすことができます。代わりに、データから価値を得られる可能性が高くなります。

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