Loyalty Innovation Awardを受賞したのは、資生堂インタラクティブビューティーだ。同社ではTreasure Data CDPなどのソリューションを活用し、資生堂グループの顧客理解の深化/ロイヤルティの向上を目指す「顧客育成戦略」の実現をサポート。ロイヤルティのステージアップに加え、潜在的なロイヤル顧客の発掘・育成を図っている。この活動の中で、マーケティング活動におけるデータ抽出・分析作業の大幅な省力化も実現した。同社のキーパーソンに、こうした取り組みの狙いと効果、今後の展望などを聞いた。
さらなる顧客理解とロイヤルティの向上に向けて導入したのが、Treasure Data CDPだ。Audience Studio機能により顧客データにアクセスし、精緻化された顧客セグメントを作成する。さらに、Journey Orchestration機能を使うことで、施策シナリオやダッシュボードをGUIで容易に開発可能だ。
どのようにクロスセルが進んでいくのかを可視化した「顧客育成パス」も実装した。
「ベストコスメ受賞などをきっかけに商品を知り、試しに手に取ってくださる。そこから興味関心を持っていただき、化粧水・乳液・美容液などシリーズで使用してくださるようになる。さらにロイヤルティが高まると、最高峰のシリーズラインナップを手に取ってくださるお客様もいらっしゃる。そういった流れを感覚ではなく、実際の数値で可視化したものです」と船田氏は説明する。
顧客にどのような商品をどのような順番でアプローチするとロイヤルティが高まりやすいのかを理解し、各施策に反映していく。これによってベース顧客層からシンボル商品の併用顧客層へ、そして最上級のロイヤルティ顧客層へと、ロイヤルティ向上を後押しする。
施策展開のスピードがアップし結果はダッシュボードで可視化
Treasure Data CDPの活用により、デジタルマーケティングの現場には既に「変化」が起きているという。
まず、手間と時間がかかるマーケターとデータエンジニアとの“ラリー”が激減した。マーケター自身が必要なデータを即座に入手できるからだ。「どんなセグメントが、どれくらい市場に存在するのか」「特定のセグメントへのアプローチは可能か」――。マーケターがアプローチしてみたいセグメントの状況をすぐに確認することができるようになった。
「顧客データはすべての販売チャネルを統合しOne ID化されているため、セグメントごとの顧客育成パスの状況や変化を容易に把握できます。『今』を知るだけでなく、潜在的なロイヤル顧客層を可視化し、行動変容を阻害するボトルネックを把握することにも役立ちます」と船田氏は語る(図)。
新たな仕組みは、生産性向上という面でもメリットが大きいという。「Treasure Data CDPは多様なAPIを実装し、様々なデータとシームレスに連携可能です。資生堂のマスターデータともこのAPIで連携しています。以前は分散しているデータを個別に収集しExcelで集計することもあったため、全体のデータを確認するのに1週間程度はかかっていましたが、今はわずか1時間でダッシュボード上で可視化できます」と船田氏は続ける。
一連の取り組みは各ブランドと連携して進めている。Treasure Data CDPを活用することで、その連携もスムーズに行える。「マーケッター同士のコミュニケーションが活性化し、相乗効果が期待できます」と船田氏は述べる。
顧客理解の深化から始まるロイヤルティ向上への道 一人ひとりに寄り添った美の体験を提供したい