CDPとCRM、最適な企業向けソリューションはどちら?
1990年代、顧客とのやり取りを追跡、管理するソリューションとして開発されたCRM(Customer Rerationship Management:顧客関係管理)システムはビジネスに広く浸透しました。多くの企業は、CRMシステムをマーケティング用途にまで拡大して利用しています。一方CDP(Customer Data Plarform)は、データドリブンな今日のビジネスで、デジタル上の顧客体験を最大化し収益を上げる企業の要件を満たすソリューションとして開発されました。
ここでは、特に営業とマーケティングにおけるCDPとCRMの役割について、詳しく見ていきましょう。
CDPとCRMの比較
CRMシステムは、その名が示すように、主に顧客情報を収集し、顧客とブランド間のコミュニケーションの履歴を管理します。この文脈で、CRMシステムは、顧客と企業との最初のコンバージョンやコミュニケーション後に実施するアフターマーケティング、アフターセールスの領域をカバーするものと考えられます。企業が既存の顧客や見込み客から収集したファーストパーティデータに大きく依存する点に、CRMの限界があります。
一方CDPは、ファーストパーティ、セカンドパーティ、およびサードパーティのデータを収集する一元的なデータベースです。これらを顧客プロファイルとして一元管理し、高度にパーソナライズされた顧客体験を提供することが可能です。2016年頃に開発されたCDPは、今日のデジタル上に膨大に生まれる顧客接点を加味したカスタマージャーニーと、マーケティングの課題に対応するために独自に設計されました。
CRMに対するCDPの大きな利点は、オムニチャネルのデータソースから収集した豊富なデータから、深い顧客インサイトを導き出せる点です。CDPによって、マーケターはマーケティング施策の微調整を行い、正確に顧客をターゲティングできます。また、CDPは深いインサイトでオーディエンスのセグメントを行い、営業ファネルのための類似したターゲットの構築を支援します。
以下の表で、営業とマーケティング部門におけるCDPとCRMのユースケースを比較します。
マーケティング | CDP | CRM |
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営業 | CDP | CRM |
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CRMシステムは日々の顧客とのコミュニケーションを記録するには適していますが、カスタマージャーニーの全体像を把握するには不足している点があります。CRMでは、顧客とのタッチポイントの狭い範囲しか把握できません。複数の顧客接点の正確なアトリビューションに対応しておらず、顧客行動の文脈を把握することができないのです。また、リアルタイムデータ、オムニチャネル・パーソナライゼーション、予測分析といった、CDPがもたらすメリットもありません。
実用面でのCDPとCRMの違いは、次のように整理できます。
CRM:オンラインと社内のデータから顧客プロファイルを構築する。 |
CDP:企業のチャネル、社内データベース、セカンドパーティ、サードパーティ、オンライン、オフラインのデータを使用し、顧客プロファイルを統一する。 |
CRMシステムはファーストパーティとオンラインのデータしか収集しないため、チャネル横断での顧客行動の分析が困難です。外部ソースやセカンド・サードパーティのデータを手動でエンコードし、同期させるのに時間がかかるため、正確なデータの理解や予測を妨げる可能性があります。CDPは、オムニチャネルデータだけでなく、ストリーミング、リアルタイム、バルクデータを処理し、素早くオーディエンスのセグメンテーションとパーソナライズを行うことができます。
CRM:メールキャンペーンなどのマーケティング施策を自動化する |
CDP:ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンを、大規模にチャネル横断で行い、パーソナライズされた体験を実現する |
従来のCRMシステムでは、リッチなカスタマージャーニーと複数チャネルを横断した顧客体験の実現は困難でした。メールなどの主要チャネルで、シンプルなキャンペーンを展開するのは可能です。CDPは、統合されたデータを使用してオーディエンスをセグメンテーションし、あらゆるタッチポイントでパーソナライズされたキャンペーンを実施できます。マーケティングに一貫性が生まれるとともに、適切な顧客体験が実現。CDPが推奨するネクストベストアクションによって、顧客を自然とコンバージョンへ導くことが可能です。
CRM:営業担当者やチーム、商談パイプラインを管理するために使用する |
CDP:マーケティング、営業、カスタマーサービス、顧客体験の分析エンジンとして活用する |
CRMは、営業成績と商談パイプラインを管理するためのツールとして有効です。また、購入履歴をトラッキングし、収益を予測することもできます。一方CDPは、社内外のデータを一元管理することで、消費者との接点である複数のチームの分析エンジンとして機能します。管理するデータとは、例えばCRM本体、広告プラットフォーム、POS、ロイヤリティプログラムなどです。CDPの顧客データ基盤と深い分析機能により、企業は実用的な顧客インサイトを得て、コンバージョン率を高めることができます。
CRMとCDPの比較のまとめ
これまで見てきたように、CDPがもたらすメリットはCRMを上回っており、CDPを活用することで、幅広いデータソースの利用、より深い顧客インサイトの獲得、そしてよりターゲットを絞ったマーケティングアプローチが可能となります。CDPはマーケティングチームと営業チームが同じ視点で、顧客とのやり取りをパーソナライズしたり、メッセージングを調整することができます。両チームはCDPを使用して、マーケティングキャンペーンから得られた顧客インサイトと営業実績のデータを組み合わることにより、一貫して顧客のニーズに合わせ、コンバージョンを促進できます。
CDPは顧客データ基盤と強力な各種機能を備えており、豊富な顧客データを活用する企業にとって最適なソリューションです。
Treasure Data CDPでレベルアップ
トレジャーデータのCDPにより、データを一元化し、マーケティングチームと営業チームは同じ目標に向かって活動することが可能になります。複数のタッチポイントを通して顧客行動を分析するマルチタッチアトリビューションモデルと、営業とマーケティングの指標を追跡するリアルタイムデータダッシュボードにより、両チームはデータに基づいた意思決定を行うことができます。
マーケティングチームは、Treasure Data CDPを使用することで、特定の地域の顧客セグメントを素早く抽出することができます。短い販売サイクルの中で、顧客がよく使うチャネルのタッチポイントをピンポイントで特定することができます。一方で、営業チームは、Treasure Data CDPを利用して、特定の状況下での顧客行動や購買傾向を予測。ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンを実施することができます。
マーケター向けファネル
Treasure Data CDPのオーディエンススタジオの機能には、ファネルというツールがあります。顧客の購買プロセスの進捗を可視化し、マーケターがマルチチャネルでの施策を通じて、マーケティングキャンペーンをカスタマイズできるようにするものです。
ファネルは、最大8つのステージからなるマーケティングファネルを作成することができます。マーケターは、ステージごとに分析を行い、施策を改善することが可能です。また、ファネルでは特定のステージのキャンペーンだけをアクティブにすることも可能です。
ファネル機能でできることは、以下の通りです。
- 既存のファネルの編集と複製
- 日数から月数まで、時間の設定をカスタマイズ
- プロファイル数と日付の表示
- 成長率をパーセンテージと日付で表示
- ステージごとのプロファイル数を追跡
- 特定のプロファイルの属性や行動を表示
Treasure Data CDPのマルチタッチアトリビューションモデルは、機械学習を利用して、カスタマージャーニー上のあらゆるタッチポイントを分析。これらのタッチポイントが売上に貢献した可能性を判断することが可能です。マーケターは、様々なチャネルとキャンペーンのパフォーマンスを確認し、効果の高い施策に力を入れ、低い施策には調整を入れることができます。各キャンペーンや顧客へのアプローチに関して、マーケティングの費用や労力を、適切に割り当てることができます。例えば、次のようなことが可能です。
- パフォーマンスの低いソーシャルメディアの投稿を、顧客アクティビティの多いチャネルに移す
- 閲覧数の多いブログのコンテンツに関して、連続した投稿を行い、継続的に顧客にアプローチする
- リアルタイムでQ&Aが広く共有された場合、今後のキャンペーンとして戦略的なライブイベントを企画する
Treasure Data CDPにより、マーケターは営業ファネルを通じて、すべての見込み客の状況を追跡し、迅速に対応することで、営業サイクルを短縮することができます。
営業担当者のためのファネルと顧客企業との関係性の追跡
営業チームは、Treasure Data CDPのカスタマイズ可能なダッシュボードを利用して、営業ファネルと顧客企業との関係性を追跡することが可能です。営業チームは、週、月、四半期、年ごとに以下の指標をトラッキングできます。
- 見込み客の行動ログ
- マーケティングクォリファイドリード(MQL)
- セールスクオリファイリード(SQL)
- 獲得した商談
- 見込み客が参加したキャンペーンの数
- ターゲット企業へのリーチ
- 売上高
Treasure Data CDPにより、ビジネスの状況を俯瞰することが可能となります。マーケティングチームは、ペルソナ間のカスタマージャーニーマップを使用して、商談パイプライン内の進行中の案件のステータスを、リアルタイムで追跡できます。また、B2Bの営業およびマーケティングチームは、B2Bマーケティングレポート機能を活用できます。
Treasure Data CDPは、パーソナライズされたコミュニケーションを通して、顧客のLTV(顧客生涯価値)を向上させます。機械学習がレコメンドした施策により、クロスセルや更新の適切なタイミングや、営業が顧客へ連絡を取るといった判断が可能です。また、営業実績の分析と予測により、最適な戦略立案が可能となり、早まった最適化を回避することができます。
Treasure Data CDPが提供するその他のB2B営業・マーケティング分析機能は、以下の通りです。
- 企業アカウントの過去X日間のエンゲージメントスコアの表示
- エンゲージメントの人数とウェブ訪問数を追跡
- 特定の企業アカウントで見られたコンテンツを追跡
- チャネルタイプ、キャンペーン、企業アカウントごとに、コンテンツやキャンペーンの収益への貢献度を追跡
- コンテンツやキャンペーンの貢献度をトラッキングするための、様々なアトリビューションモデルを選択。多変数、ファーストタッチ、ラストタッチ、線形、時間減衰、U字など
- マルチタッチアトリビューションモデルとカスタマージャーニーを組み合わせて、影響力のあるタッチポイントを特定
Treasure Data CDPを用いることで、機械学習を活用した顧客インサイトの獲得、クロスチャネルのパーソナライズ、カスタマイズされた顧客ビュー、エンタープライズグレードのセキュリティとプライバシー保護が可能となり、顧客データを活用して成果を生み出すことができます。また、特定の顧客セグメントや個人のプロファイルを特定し、コミュニケーションを続けるために、タイムリーなオファーをを提供することも可能です。CRMからCDPへの移行を検討する際は、ぜひトレジャーデータへお問い合わせください。